[アムステルダム/フランクフルト 13日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)が打ち出した金融緩和に対し、独連銀のワイトマン総裁やオランダ中銀のクノット総裁らのタカ派から批判の声が相次ぐ一方、スロベニア中銀のバスレ総裁は支持を示し、ECB理事会内の見解の相違が明確になった
ECBは12日に開いた理事会で、市中銀行が余剰資金をECBに預け入れる際の適用金利である預金金利を現行のマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げることを決定。金利階層化のほか債券買い入れの再開、銀行を対象とした長期資金供給オペ(TLTRO)の条件緩和などの包括的な緩和措置を打ち出した。
関係筋によると、採決は実施されなかったものの、買い入れ再開には3分の1を超える反対があり、通常は合議制を重んじる理事会としては珍しくドラギ総裁が反対を押し切って決定した。
ECBが決定した緩和策について、クノット・オランダ中銀総裁は13日、「資産買い入れを含むこの包括的な緩和策は経済の現状にそぐわず、効果に疑問を呈する妥当な理由は存在する」と指摘。ユーロ圏経済が潜在能力を完全に発揮し、賃金も上昇する中、資金調達を巡る状況は逼迫していないとし、「低リスク資産の枯渇や金融市場のおけるプライシングの歪みのほか、住宅市場で過度なリスクテイクが台頭する兆しが高まっている」と述べた。
ワイトマン独連銀総裁は、これほどの包括的な緩和策が必要なほど景気は悪化していないにもかかわらずECBは過度な刺激策を打ち出したと批判。今回の理事会を受け金利が極めて長期にわたり低水準にとどまることが明確になったとし、利上げの遅延を食い止めることを目指すと述べた。
ドイツはこれまでもECBのマイナス金利政策に批判的で、13日付のドイツの日刊大衆紙ビルトは、ECBのマイナス金利の深掘りを批判。ドラキュラ伯爵ならぬ「ドラギラ伯爵」がドイツの預金者の口座を「吸い尽くそうとしている」と揶揄した。
このほか、ホルツマン・オーストリア中銀総裁は、インフレ目標の引き下げの可能性などを含む政策の見直しを行う前に、このような包括的な緩和策を決定するべきではなかったとの見解を表明。インフレ率が1.5%であることが物価安定を示す可能性もあるとし、「2%に押し上げるためにあらゆる政策手段を投入する必要はない」と述べた。
一方、バスレ・スロベニア中銀総裁は、経済成長とインフレが低調な中、ECBには「必要であれば政策手段を強化し、新たな手段を講じる」用意があると述べ、ECBの決定に支持を示した。