18日、サウジアラビア西部ジッダでムハンマド皇太子(右)と会談するポンペオ米国務長官(AFP時事)
18日、サウジアラビア西部ジッダでムハンマド皇太子(右)と会談するポンペオ米国務長官(AFP時事)

 【カイロ時事】サウジアラビアの石油関連施設に対する攻撃で、攻撃の主体や起点をめぐる謎が深まっている。米国は「イランによる攻撃で、戦争行為だ」(ポンペオ国務長官)と非難し、サウジも「疑いなくイランが支援した」と同調。一方、サウジと敵対するイエメン反政府武装組織フーシ派は自ら実行したとの主張を貫き、イランは関与を強く否定している。21日で攻撃から1週間がたつが、真相が判明せずに双方の不信感が高まり続けている。

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◇「証拠」で圧力

 サウジ国防省は18日、攻撃に使われたとする無人機や巡航ミサイルの残骸、監視カメラの映像などを公開。「北から飛来した」と指摘し、サウジ南方のイエメンからの攻撃を否定した。ただ、記者団が「(サウジ北方の)イランからの攻撃か」と詰め寄っても、サウジ側は明言を拒んだ。

18日、サウジアラビアのリヤドで公開された、石油関連施設への攻撃に使われたとされるミサイルの残骸(EPA時事)
18日、サウジアラビアのリヤドで公開された、石油関連施設への攻撃に使われたとされるミサイルの残骸(EPA時事)

 トランプ米大統領は、被害が甚大で長期化しかねないイランへの大規模な軍事作戦には消極的とされる。米・サウジ両国は、無人機やミサイルがイラン領内から発射された可能性は「極めて高い」との見方を強め、衛星画像などの「物証」を次々と示して「イラン包囲網」を強めている。ただ、「イランが攻撃の起点」と直接的に断定すれば、軍事行動を含む報復措置を求める機運が高まりかねない。
 サウジは、国連の専門家を現地調査に招請。ムハンマド皇太子の要請を受け、フランスも爆発物やミサイルに精通した軍事専門家らの調査団を派遣した。サウジとしては対イラン非難の度合いは上げつつも、対抗策を取るための国際社会の理解が得られるか慎重に見極めているもようだ。

◇緊張求める勢力か

 一方のイランは、疑惑の払拭(ふっしょく)に躍起だ。ロウハニ大統領は「イエメン人が敵に警告するため行った」とフーシ派への全面支持を表明。ザリフ外相は19日放映の米CNNテレビのインタビューで「(フーシ派の攻撃かどうか)確証はないが、われわれの仕業でないことは知っている」と強調した上で、米国やサウジが軍事行動に踏み切れば「領土を守るためにひるみはしない。全面戦争になる」と警告した。

 サウジへの攻撃は、原油輸送の要衝ホルムズ海峡の近海で6月、日本の海運会社運航のタンカーが何者かに襲われた事案と類似点が多い。米国は当時、イラン精鋭部隊「革命防衛隊」が実行した証拠とする動画を公表して「イラン犯行説」を主張。しかし、イランが否定し、各国の同調も広がらないまま、今も犯行主体や背景、動機などが解明されていない。

 タンカー襲撃は、米イランの仲介を目指した安倍晋三首相のイラン訪問中に発生。そして今回のサウジ攻撃は、今月下旬のトランプ氏とロウハニ師の首脳会談実現が模索される中で起きた。いずれも、米国とイランの接近を嫌い、中東の緊張激化をいとわない革命防衛隊などの強硬勢力が画策した可能性も排除できない。