[ワシントン 4日 ロイター] – 米労働省が4日発表した9月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月から13万6000人増と、緩やかな伸びとなった。市場予想は14万5000人増だった。失業率は前月の3.7%から3.5%へ低下し、1969年12月以来、約50年ぶりの低水準となった。貿易摩擦が続く中、景気後退入りへの懸念が和らぐ可能性がある。 

iCIMSの主席エコノミスト、ジョシュ・ライト氏は「景気後退が近付くと失業率は通常上昇する。そのため、景気後退に陥るとしても、早くても2020年終盤ごろになる可能性が示された」と述べた。 

7・8月分の雇用者数は当初発表から4万5000人上方改定された。 ただ、9月の時間当たり平均賃金は前月から横ばいだった。8月は前月比0.4%増加していた。9月の前年同月比は2.9%増。8月は3.2%増だった。 

平均週間労働時間は前月と同じく34.4時間だった。 

エコノミストは賃金の伸び悩みについて、人材不足から企業が未経験社員の採用を余儀なくされていることが背景にあると指摘する。 

ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「貿易摩擦が長期化し影響が拡大する中、賃金が今後数カ月で大幅に上昇することは想定しない」と述べた。 

現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は6.9%に低下し、2000年12月以来の水準に改善した。 

今年は雇用が月平均で16万1000人伸びている。9月は平均を下回ったが、依然として労働年齢人口の伸びを維持するのに必要な約10万人を上回っている。 

今週は軟調な経済指標が続いた。9月の製造業景気指数は10年ぶりの低水準を付けた。9月のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)は16年以来の低水準だった。

15カ月間続いている米中貿易摩擦の影響が広範な経済に波及している兆しが見られ、労働市場が底堅さを維持することが景気への打撃を和らげる上で重要になっている。 

雇用は緩やかに伸び続け、失業率は大幅に低下しているものの、米連邦準備理事会(FRB)は依然として年内に少なくともあと1回は利下げするとエコノミストはみる。 

JPモルガンのエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「FRBが月内に追加利下げすると引き続き予想する」とし、「指標がより堅調な内容とならなければ、FRBは下方リスクに対し十分な保険を準備したと確信できないだろう」と述べた。 

FRBは7月に08年以来初めて利下げに踏み切った後、11年目に入った過去最長の景気拡大継続に向け先月も追加利下げを決定。第3・四半期国内総生産(GDP)は年率で1.3―1.9%増と予想されている。第2・四半期は2.0%増と、第1・四半期の3.1%増から減速した。 

9月の雇用は政府部門を除き全ての部門で鈍化。2020年に10年おきに国勢調査があるため、政府は雇用を増やしている。 

民間部門は前月から11万4000人増と、前月の12万2000人増から減速。3カ月平均では11万9000人増と、2012年7月以来の小幅な増加にとどまった。 

製造業は前月から2000人減少し、3月以来のマイナスとなった。前月は2000人増だった。製造業は昨年の好調な伸びから勢いをなくしている。トランプ政権は貿易摩擦について、米製造業を押し上げるのが目的だと主張しているが、皮肉なことに同部門が打撃を受けている。製造業は残業も減らしている。 

とりわけ自動車産業は4100人減と、減少が目立った。ゼネラル・モーターズ(GM)ではストが続いており、今後も長引けば一段の雇用減につながる恐れがある。 

建設は7000人増。小売は1万1400人減と、8カ月連続で減少した。 政府部門は2万2000人増。前月は4万6000人増だった。