• 50億ドルの貸し付け、30億ドル相当の株式を公開買い付けで取得
  • ソフトバンクGの助言金融機関にはレイン・グループ

ソフトバンクグループは23日、シェアオフィス事業を手掛ける米ウィーワークの支援策を発表した。総額は95億ドル(約1兆円)規模となる。

発表によれば、ソフトバンクGは50億ドル(約5400億円)を貸し付けるほか、既存株主から最大30億ドルの株式を公開買い付け(TOB)し、株式の保有比率を80%程度まで高める。すでに予定していた15億ドル相当も出資する。ソフトバンクGは傘下のビジョン・ファンドなどを通じて1兆円程度を出資し、約3割を持つ筆頭株主となっていた。

ソフトバンクGは議決権の過半は保有せず、ウィーワークは連結子会社とはしないが、ソフトバンクG副社長のマルセロ・クラウレ氏がウィーワークのエグゼクティブチェアマンとなり再建にあたる。共同創業者で同社を率いてきたアダム・ニューマン氏は議決権を行使しないオブザーバーとして取締役会に参加する。

Masayoshi Son Delivers Keynote At Annual SoftBank World Event
ソフトバンクGの孫社長Photographer: Akio Kon/Bloomberg

企業統治上の問題や実際の企業価値は低いとの見方が浮上したウィーワークは上場中止に追い込まれ、ソフトバンクGとJPモルガン・チェースがそれぞれ提示した資金支援案を検討していた。支援を受けなければ、来月にも資金繰りに窮するところだった。ソフトバンクGの救済策はウィーワークの企業価値を約80億ドルと見積もっており、今年1月に評価された470億ドルから大きく目減りした。

ソフトバンクGの孫正義会長兼社長は発表文で、ソフトバンクGはウィーワークが人々の働き方の変革をけん引すると信じており、「大型の資本投入と業務支援を通じ、同社に再投資することに決めた」と説明した。

ソフトバンクGのフィナンシャルアドバイザー(FA)は米投資銀行のレイン・グループ、ビジョン・ファンドにはラザードなどが務めた。ウィーワークのFAはペレラ・ワインバーグ・パートナーズ。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は今回の支援について、ソフトバンクG本体が「1つの会社にこれほどの金額を出すとは信じられない。これはおかしいとリスクを感じている投資家もいるだろう」と分析。「ユニコーンと言われる企業に本当に価値があるのか疑心暗鬼にならざるを得ない事例だ」と話した。

株価は自社株買い発表前の水準まで下落

ウィーワーク救済は、ソフトバンクGの孫社長が注力する10兆円規模のビジョン・ファンドへの悪影響も必至だ。現在、1号ファンドを上回る規模の2号ファンドへの出資を募っている。

事情に詳しい関係者によると、孫社長は21日、2017年に210億ドル強のバリュエーション(株価評価)でウィーワークに出資したビジョン・ファンド1号の投資家に電話会議で陳謝した。ソフトバンクGとビジョン・ファンドの広報担当者はコメントを控えるとしている。

ソフトバンクGの株価は23日、最大で前日比3.5%下落し、2.5%安の4190円で取引を終えた。6000億円規模の自社株買いを発表した2月以前の安値水準にある。同社の投資先では米配車サービスのウーバー・テクノロジーズや職場向けメッセージアプリのスラック・テクノロジーズの株価も下落傾向にある。

ウィーワークは2010年設立。現在100都市の500以上の拠点でデスクや専用オフィス、本社機能を提供する。日本には18年2月に進出し、東京・丸の内北口や銀座にも拠点を持つ。日本拠点のCEOには10月、マネジングディレクターだった佐々木一之氏が就任した。