エドアール・フィリップ首相は9月12日、2020年夏までに年金改革の成立を目指すと発表した。改革の柱は、被保険者間に平等の保障を与える年金制度の一本化だ。年金改革はマクロン大統領の選挙公約の1つで、このため政府は2018年4月から労使と協議を進めている。
フランスには現在、民間企業の一般制度(219KB)に加え、公務員・公営企業の特別制度、農業従事者、自営業者の職業ごとの自治制度など42の年金制度が存在する。民間企業の従業員が最も高給だった25年間の給与の平均を基準に受給額を計算するのに対し、公務員は退職前6カ月の平均給与を基準に計算する。また、特別制度には早期退職の優遇制度があるなど、制度ごとに受給条件が異なっている。
改革では、年金制度を一本化し、年金支給額の算定方法を現行の拠出期間の四半期数からポイント制に変更、同額の拠出金に対し同額の年金付与を目指す。新たな年金制度は、1963年以降に生まれた人を対象に2025年1月から開始するものとし、2040年の全面移行まで移行期間を設ける予定だ。
年金の収支均衡も課題の1つ。フィリップ首相は9月12日、テレビ局TF1のインタビューで、「現役就労者数と年金受給者の比率や人口の変遷(高齢化)を考慮すると、基準年齢(の設定)、または拠出期間(の延長)により、さらに長く働く必要がある」と述べた。基準年齢より早く退職する場合は受給額を減額し、基準年齢より遅く退職する場合は受給額を増額するものだ。
政府は9月から12月初旬にかけて、改革により影響を受ける職業団体や労使との協議を再開する。さらに9月から年末まで、市民の声をオンラインで受け付け、また地方議員や協会を中心に公開会議も実施する。
年金改革により、既得権を失う特別制度を享受する労働者の反感は必至とみられており、改革は難航しそうだ。9月13日にはパリ交通公団(RATP)による大型スト、同16日には弁護士や医療関係者ら自由業者のデモが行われた。9月24日にはフランス国鉄(SNCF)のストが行われる予定。
(奥山直子)