来年度からの大学入学共通テストで予定されていた国語と数学の記述式問題の導入見送りが決まった。
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受験生約50万人を対象とする記述式には、採点での公平性確保などに不安があり、見送りは当然だ。
これで英語民間試験とともに新テストの2本柱がなくなったことになる。多くの受験生を混乱させ、教育行政の歴史に汚点を残した大失態である。政府は経緯の検証を進め、責任の所在を明らかにすべきだ。
萩生田光一文部科学相はきのうの記者会見で、民間業者に委託した採点でミスを防げない懸念や、受験生の自己採点の難しさに抜本的な解決策が見つからなかったことを理由に挙げた。そのうえで、導入を延期ではなく白紙にしたと説明した。
だが、課題は以前から明白だった。2015年に設置された有識者会議で既に実現を疑問視する声もあった。2度の試行調査でも課題解消のめどは立たなかった。それなのに、これまで導入にブレーキをかけられなかった。
英語民間試験と記述式には共通点がある。英語の「読む・書く・聞く・話す」の4技能や、「思考力・判断力・表現力」を測ることを理念として掲げる一方で、それをどういう方法で実現するかという議論が置き去りにされたことだ。
国に実施のノウハウも要員もなく、民間頼みとなった点も同じだ。安易な制度設計と言うしかない。
萩生田氏は会見で「特定の人の責任でこういう事態が生じたのではない」と述べ、責任の明確化に後ろ向きな姿勢を示した。
だが、受験生は既にテストの準備を始めていた。見送りだけでは済まされない。英語民間試験とともに第三者機関で経緯を検証し、教訓として報告書を残すべきだ。
有識者会議の元委員によると、記述式などの実現の難しさを認識していた文科省幹部も少なくなかったという。それでも止められなかったのは、教育再生が安倍政権の重要政策であり、大学入試改革がその中核を担っていたためだろう。改革を推進した政権の責任も問われる。
共通テストまであと1年あまりしかない。文科省は、混乱の収拾に全力を尽くし、受験生の不安の払拭(ふっしょく)に努めなければならない。