[ワシントン 7日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は7日に発表した半期に一度の金融政策報告書で、製造業の落ち込みや世界経済の低迷を受け、「緩やかに」拡大している米経済が昨年鈍化した一方で、主要なリスクは後退し、リセッション(景気後退)の可能性は減少したとの認識を示した。 

FRBは「通商政策を巡る対立が幾分緩和し、海外の経済成長が安定化の兆しを見せ、金融情勢が和らいだことで、米国の見通しに対する下押しリスクは昨年後半に後退したようだ」と指摘。米雇用市場と個人消費は依然堅調だとした上で「来年にかけてリセッションが発生する可能性はここ数カ月で著しく低下した」とした。 

またリスクとして、新型コロナウイルスの感染拡大による副次的な影響、「上昇した」資産価値、過去最高水準に迫る低格付け企業の債務などを挙げ、経済悪化の一因になる恐れがあるとした。 

労働省が発表した1月の雇用統計が好調だったにもかかわらず、新型ウイルスの感染拡大を巡る懸念でこの日の米株式市場は下落。米政権当局者は米経済への影響は「最小限」になる公算が大きいとの見解を示したものの、新型ウイルスの感染拡大は景気見通しに対する想定外で予測不能な要因となっている。 

ただFRBは、2019年に実施した3回の利下げを受け、全体的には10年を超す米景気回復に対するリスクは緩和していると言及。「製造業や通商面に関する世界的な鈍化は終わりを迎えるとみられるほか、世界中の個人消費やサービス部門の活動は引き続き持ちこたえている」証拠が見られるとした。 

一方で「最近の新型コロナウイルスの発生は中国の混乱につながり、世界経済に波及しかねない」と警告した。 

報告書では、FRBがフェデラル・ファンド(FF)金利の現行水準について経済回復を維持する上で「適切」であると判断しているほか、米短期市場の需給逼迫を回避するための資金供給策はテクニカルな措置であり、金融政策とは異なると認識しているとの見解を改めて示した。 

このほか、昨年の製造業の落ち込みが経済成長全体にどのような影響を及ぼしたかについても分析。工場生産の鈍化によって、国内総生産(GDP)の成長率が0.2─0.5%ポイント押し下げられたとしたが、過去のリセッション時の数値には「はるかに及ばない」と結論付けた。 

金融政策報告書の公表を受け、パウエルFRB議長は11日に下院金融サービス委員会、12日に上院銀行委員会で証言を行う。これに先立ち、上院銀行委の民主党議員らはパウエル議長に書簡を送り、短期金融市場で昨秋に資金需給が逼迫し、金利が急騰したことを受けてFRBが講じた市場安定化策について説明を求めた。