【ニューヨーク時事】米政府は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた企業の支援に乗り出す。焦点は航空機大手ボーイングの救済だ。2度の墜落事故を起こした新型旅客機「737MAX」の運航停止による業績悪化に、旅行需要急減が追い打ちをかけた。同社は600億ドル(約6兆6000億円)以上の資金援助や債務保証などを要請したが、調整が難航する可能性もある。
ボーイング、22年ぶり赤字転落 19年通期、737MAX問題響く
戦闘機やミサイルなども展開し裾野が広いボーイングの動向は、米経済全体に影響を及ぼす。同社によると、部品供給メーカーは米国内外で約1万7000社、関連雇用は250万人とされる。
737MAXは、2018年と19年に墜落事故を起こし、運航停止。今年1月に生産を止めた。19年通期決算では、商用機納入がほぼ半減し、22年ぶりに赤字転落。欠航を強いられた航空各社への補償など、運航停止関連費用は180億ドル(約2兆円)に上る見通しだ。
感染封じ込めのため、国境封鎖や渡航自粛が世界的に拡大。航空機需要も短期的には落ち込みが避けられず、同社の経営環境は急速に悪化した。米メディアによると、金融機関の融資枠はすべて使い果たした。レイオフ(一時解雇)を検討しているといい、資金繰り不安も浮上する。
737MAXの運航再開に向けた当局の審査過程では、安全性を軽視するボーイングの姿勢も暴露された。運航停止により損害を被ったとして、株主などが提訴する可能性も指摘されている。「業績悪化は新型コロナというよりも737MAXの問題が大きい」(米アナリスト)として、今回の公的な救済の必要性を疑問視する声もある。