新型コロナウイルスの感染が急増していることを受け、日本医師会は3月30日に記者会見を開き、「緊急事態宣言を出していただき、それに基づいて対応する時期ではないか」と提案した。
常任理事の釜萢(かまやち)敏氏は「専門家の間では緊急事態宣言はもう発令していただいた方がいいのではないかという意見がほとんど。感染拡大の状況を見れば、もう発令していい」と述べた、
一方、「宣言のインパクトは大きい」としたうえで、「政府は疫学だけでなく社会への影響をどう評価するか総合的な判断が必要になる。国がバランスをとって判断するだろう」と政府に対応を促した。
医師会の会見に先立ち、菅義偉官房長官は緊急事態宣言について「ぎりぎり持ちこたえているという状況にある」との認識を示していた。同日午前の記者会見では、「緊急事態宣言は、国民生活に重大な影響を与えることを鑑みて、多方面から専門的な知見に基づき慎重に判断することが必要だ」と述べていた。
医療体制「今とてもギリギリ」
東京都内では新型コロナウイルスの感染者の数が急速に増えている。東京都によると、3月25日から5日間で新たに確認された感染者の数は259人で、感染経路が不明な感染者の数も増えている。
会見では、医療体制についても釜萢氏は「今とてもギリギリなところ」と語り、懸念を示した。「入院状況は厳しくなってはいるが、現状においては新たな感染者への対応が可能です。でも、さらに(感染拡大が)急激になると、とても患者を収容できない状態になる」
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が3月28日に定めた医療の基本的対処方針では、患者が増加し重症者に対する医療提供に支障が出る可能性がある場合、軽症者を自宅や宿泊施設で療養させることなどが明記されている。
釜萢氏は「症状が軽症や中等症で、入院が必要ない人にはベッドを空けていただかないと重症者の治療ができない。自宅における健康観察、宿泊施設への移動をお願いしなくてはいけないというのが喫緊の課題だ」と指摘。
「施設がそれだけ用意できるのか、民間ホテルが応じてくれるのか、課題は山積している。自宅や施設に移っていただいた場合には、日々の健康管理の様子を把握するところに人員を割かなくてはいけない。そこにしっかり対応しながら、病床を空けていく必要がある」と、国に対応を求めた。
終息のシナリオは?
また、終息の見通しについては 「確定的なことは言えない」とことわったうえで、「国内の感染拡大がだんだん収まってきて、患者の発生が収まってきても、海外の感染の状況はまだ当面は続くだろう。収まった、また増えた…というのを繰り返すのではないか」と厳しい見方を示した。
中村 かさね (Kasane Nakamura)