[8日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)が8日公表した3月の2回の緊急連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、新型コロナウイルスの発生が米経済に悪影響を及ぼし、金融市場を混乱させた迅速さに懸念を強め、「強力な措置」の決定につながったことが分かった。
新型ウイルスのパンデミック(世界的大流行)が深刻化する中、FRBはこれまでで最も迅速に前代未聞の規模の支援策を導入した。議事要旨はこうした対応の経緯の詳細を初めて明らかにした。混沌とした数週間でFRBが下した判断は向こう数十年間の世界経済を形作る可能性がある。
緊急会合は3月2日と15日に行われた。政策当局者は金利をゼロ付近に引き下げ、海外の中央銀行へのドル供給を拡大したほか、危機時の金融政策の代表格となった大規模な資産買い入れプログラムを再開した。最初の利下げは2日夜のビデオ会議を経て、翌3日に発表した。
新型ウイルスの感染拡大や、感染拡大を抑えるための対策が米経済に与える打撃に対応するため、FRBが過去最大の規模の支援策を導入することを、いかに速く求められていたかが議事要旨からうかがえる。
ロイターの調べによると米国の感染件数は40万件を超えた。死者数は約1万3000人。
3日の利下げのわずか5週間前となる1月下旬にFRBは今年初の会合を開催。当時は慎重ながらも前向きな見方を示していた。20年は安定的に成長し、労働市場の底堅さが続くとの見解だった。米中貿易摩擦の打撃を和らげるために3回金利を引き下げた19年を終え、明るい兆しが見えていた。2月19日に公表された会合の議事要旨によると政策当局者は総じて前向きだったものの、新型ウイルスの感染拡大のリスクは「注視すべきだ」としていた。議事要旨が公表された翌日から米株式相場は1カ月間急落が続き、時価総額の3分の1が吹き飛んだ。
2月中旬時点でもFRBは、新型ウイルスの感染拡大が中国以外の地域へ波及する規模は限定的との見方だった。中国の工場から部品や最終製品を調達する上で混乱が生じる可能性はあるが、より広範なリスクはあまりないとしていた。
その後、新型ウイルスは米国へ広がり、中国やその他の国でも危機が深刻化した。FRBは10年前に利用した危機の対応戦略を引っ張り出し、過去最高値から暴落した株式相場の安定を図った。
大半のFRB当局者が、米経済は既に景気後退入りしているとみている。第2・四半期の国内総生産(GDP)は2桁のマイナスになるほか、新型ウイルスの感染拡大を抑えるための外出自粛規制で、少なくとも一時的に2000万人超が失業する恐れもある。