安倍晋三首相は16日、新型コロナウイルス対策として国民1人当たり10万円の現金給付を速やかに実施するため、2020年度補正予算案を組み替える方針を決め、公明党の山口那津男代表に伝えた。収入減少世帯への30万円給付は補正から外す。複数の自民党幹部によると、所得制限を設けない。現金給付をめぐる首相と公明党の攻防は、首相が妥協することで決着した。
一律10万円、与党圧力に安倍首相転換 所得制限不評、危機感広がる―追加経済対策
首相は16日夜の政府対策本部で、緊急事態宣言の対象を全国に拡大したことを踏まえ、30万円給付を見送る考えを表明。「さらに給付対象を拡大した措置を講ずるべきだ。全国全ての国民を対象に一律1人当たり10万円の給付を行う方向で与党において再度検討する」と強調した。
閣議決定された予算案が国会提出前に修正されるのは、統計不正の影響を受けた19年度当初予算案以来。ただ、政府の看板政策が抜本的に変更されるのは極めて異例で、見通しを誤った政権に批判の声が出る可能性がある。
政府は当初、20日に補正予算案を提出し、24日までに成立させる方針だったが、一連の日程はずれ込む。自民党幹部によると、組み替えた予算案は20日に閣議決定をやり直し、27日にも提出。祝日の29日も審議し、30日成立を目指す。
首相は16日、山口氏と電話で協議。山口氏は所得制限なしの一律10万円給付を補正に盛り込むよう重ねて求め、首相は「検討する」と応じた。首相は麻生太郎副総理兼財務相や自民党の二階俊博幹事長らと相次ぎ対応を協議した後、山口氏に組み替え方針を伝えた。