テレビ会議に臨むロシアのプーチン大統領=4月29日、モスクワ郊外(EPA時事)
テレビ会議に臨むロシアのプーチン大統領=4月29日、モスクワ郊外(EPA時事)

 【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領(67)が2000年5月に就任してから7日で20年となる。プーチン氏は今年、自らの5選出馬に道を開く憲法改正を主導し、求心力拡大を狙っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大でシナリオに狂いが生じた。コロナ禍で経済への打撃も大きく、難しい局面に立たされている。

 プーチン氏は1月に改憲を提案。本来は立候補できないはずだった24年次期大統領選への出馬を可能にする内容が3月に盛り込まれ、4月22日に改憲の是非を問う全国投票が予定されていた。

 5月9日にはモスクワで各国首脳を招いた戦勝記念行事を計画。改憲を成立させた上で華々しく行事を行い、就任20年のプーチン氏の指導力を内外に誇示する筋書きを描いていたが、全国投票も戦勝記念行事も新型コロナの感染拡大で延期になった。

 ロシアの感染者数は3月末に約2300人だったが、その後急増し、今月5日時点で約15万5000人と歯止めがかかっていない。「状況はコントロールされている」と強調してきたプーチン氏も4月末、「非常に厳しい状況にある」と危機感をあらわにした。ミシュスチン首相ら政権幹部も感染し、不安は広がっている。

 世界的な原油価格の急落も追い打ちを掛ける。ロシアは国家予算の35%程度を石油・天然ガス関連の歳入に依存。油価下落に加え、ロシアは新型コロナの感染拡大を受け、3月末から経済活動を抑制する「非労働期間」に入っており、欧米の制裁で停滞する経済は一層減速する見通しだ。ロシア中央銀行は今年の経済成長率をマイナス4~6%と予測した。

 世論調査によれば、プーチン氏の支持率は昨年末の68%から3月は63%に下落。政権の新型コロナ対策をめぐり4月に一部の地方で抗議デモが起きたほか、野党勢力はインターネット上での抗議活動を散発的に開催している。ただ、こうした動きは大きなうねりにはなっておらず、政治評論家のミハイル・ビノグラドフ氏は「プーチン氏のキャリアの中で容易ではない時期ではあるが、危機的とまでは言えない」とみている。