新型コロナ 経済影響

政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する今年度の第2次補正予算案を27日、閣議決定しました。店舗の賃料の支援や企業の財務基盤の強化策などを盛り込み、一般会計の追加の歳出は総額31兆9114億円と、補正予算としては過去最大の規模です。

政府は27日、持ち回りの閣議で、感染拡大を受けた追加の対策を実行するための第2次補正予算案を決定しました。

主な政策を見ますと、
▼治療薬の開発や医療従事者への慰労金など、医療提供体制の強化に2兆9892億円、
▼店舗の賃料の負担を軽減するため、売り上げが落ち込んだ事業者に原則、賃料の3分の2を半年分給付する制度に2兆242億円、
▼雇用調整助成金の1日当たりの上限額を1万5000円に引き上げるとともに、勤め先から休業手当を受け取れない人に月額で最大33万円を給付する制度などに4519億円、
▼企業の財務基盤の強化策や無利子・無担保の融資制度など資金繰り支援の拡充に11兆6390億円を盛り込みました。
▼「地方創生臨時交付金」を2兆円増額し、
▼影響が長期化した場合に備えて感染症対策の予備費を10兆円積み増します。

この結果、第2次補正予算案の追加の歳出は一般会計の総額で31兆9114億円に上り、補正予算として過去最大の規模となります。

財政投融資や金融機関の融資などを合わせた「事業規模」は117兆1000億円程度となります。

必要な財源は全額を国債の追加発行に頼ることになり、
▽赤字国債を22兆6124億円、
▽建設国債を9兆2990億円、発行します。

これにより、当初予算と第1次補正予算を含めた今年度の国債の新規発行額は過去最大の90兆2000億円に達し、歳入の56.3%を国債に頼ることになります。第2次補正予算案などに盛り込まれた追加の対策は、事業規模が117兆1000億円程度、財政支出が72兆7000億円程度となります。

財政支出は、国の一般会計や特別会計からの支出に、政府系金融機関などを通じて民間に資金供給する「財政投融資」などを加えたものです。

先月決定した緊急経済対策を実行するために編成した第1次補正予算などの財政支出48兆4000億円を大幅に上回る規模となりました。

これは、企業の資金繰り対策で、無利子・無担保の融資や、財務基盤の強化に向けた出資枠を拡大するため、財政投融資を39兆円余り計上したことが主な要因です。

一方、117兆1000億円程度となった事業規模は、財政支出に加えて金融機関による融資や保証の枠、それに民間企業の支出なども含めた対策の総額を示し、前回の対策と並ぶ規模となりました。

これにより、感染拡大を受けた一連の対策の事業規模は総額で233兆9000億円程度となり、政府はGDP=国内総生産のおよそ4割に上る世界最大の対策だとしています。

医療、感染防止は

医療、感染防止は

▽包括支援交付金拡充
病床の確保や人工呼吸器の整備など、地域の医療提供体制を強化するため、「緊急包括支援交付金」を現在の1490億円から2兆2370億円に増額します。患者を受け入れている医療機関の従事者や感染が発生した介護施設などの職員に対して慰労金として20万円を給付します。受け入れのために病床を確保した医療機関の従事者などに10万円、そのほかの医療機関などで働く人には5万円を支給するとしています。

▽診療報酬の引き上げ
重症や中等症の患者を受け入れた医療機関は治療に多くの人手が必要になっていることなどから、診療報酬を先月に続いてさらに引き上げます。具体的には、ICU=集中治療室に入院して「ECMO」と呼ばれる人工心肺装置をつけた重症患者などの治療に対する報酬や、酸素吸入が必要な中等症以上の入院患者の治療に当たった場合などの加算を3倍にします。これについては、第2次補正予算案に先立って予備費で159億円を支出することを決めています。

▽医療機関の収入保障
感染症の患者の専用病床を設けている医療機関について、病床が空いている場合でも収入を保障します。

▽医療用物資の確保
感染拡大を受けて、医療現場では医療用のマスクやガウンなどが不足しています。国がメーカーなどからこうした医療物資を買い上げ、患者を受け入れている医療機関に優先的に配布するため4379億円を計上しました。

▽治療薬・ワクチン
新型コロナウイルスへの効果が期待されている治療薬やワクチンの開発資金の補助や、早期の実用化に向けて、生産体制の整備のための費用として2055億円が計上されました。

▽妊婦PCR検査
生まれてきた赤ちゃんや立ち会いの助産師などが新型コロナウイルスに感染するリスクを軽減するため出産間近の妊婦で、希望する人には、国が費用を全額補助して、PCR検査を実施します。

生活・学び継続の支援は

生活・学び継続の支援は

▽緊急小口資金の拡充
生活に困っている人が当面の生活費などとして無利子で最大20万円を借りられる「緊急小口資金」について、申請が増加していることを踏まえ貸し付けの規模を大幅に拡充するため、2048億円を計上しました。

▽ひとり親世帯への支援
経済的に厳しい状況に置かれているひとり親世帯に臨時の給付金を支給する費用として、1365億円を計上しました。児童扶養手当の受給世帯に5万円を支給し、第2子以降は3万円を加算するのに加え、児童扶養手当を受け取っていないひとり親世帯も含め、収入が大きく減少した場合は5万円を支給します。

▽大学などの授業料の減免
家計が苦しくなって学業の継続が困難になっている学生を支援するため学校側が授業料などの減免を行った場合に国が補助する費用として、153億円を充てます。国立の大学や高等専門学校などでは減免額の全額、私立大学などでは3分の2を国が補助します。

▽学生最大20万給付
休業の影響でアルバイトの収入が減少した学生に10万円、このうち、住民税非課税世帯の学生には20万円を給付します。大学院や大学、専門学校、日本語学校などに通うおよそ43万人が対象です。予備費からの支出をすでに決めていて、学校側が学生の状況などを確認したうえで、6月中旬ごろから日本学生支援機構を通じて給付することを目指すとしています。

▽教員、学習指導員追加配置
休校が続いた学校の再開に伴い、学習の遅れを取り戻すために必要となる教職員などの人材確保を支援するため、318億円を計上しました。具体的には、地域の感染状況に応じて、小学6年生や中学3年生を少人数の編成にするため、本来の定員に加えて3100人の教員を配置するほかチーム・ティーチングなどにあたる学習指導員などを追加で配置する費用を補助します。

▽学校感染症対策、学習保障
学校での感染症対策や家庭用の学習教材の整備などを進めるため、小中学校や高校などを対象に、地域の感染状況などに応じて、1校当たり100万円から300万円程度を緊急的に支給します。これに必要な費用などとして、421億円を計上しました。

▽光ファイバー整備推進
学校や家庭で情報通信技術を活用した教育環境などを整えるため、光ファイバーが整備されていない学校がある地域などで整備を推進する費用として502億円を充てます。

雇用の維持・事業の継続支援は

雇用の維持・事業の継続支援は

▽雇用調整助成金の拡充
一時的な休業などで従業員の雇用維持を図る企業に対して、休業手当などの一部を助成する「雇用調整助成金」を抜本的に拡充します。具体的には、現在、1人1日当たり8330円となっている上限額を1万5000円、月額でみると、33万円に引き上げます。上限額や助成率の引き上げの特例が適用される期間は、ことし4月から6月末までとしていましたが、これを9月末まで延長し、解雇を行わない中小企業には全額を助成します。

▽休業手当の新制度
勤め先の企業の資金繰りの悪化などの理由で休業手当を受け取れない人に対しては、国が直接、給付する「休業支援金」の制度を創設します。その費用として5400億円余りを計上しました。中小企業で働く人が対象で、給付率は休業前の賃金の8割とします。上限額は雇用調整助成金の水準と合わせて月額33万円とし、適用される期間もことし4月から9月末までとなります。

▽家賃支援
店舗の賃料の負担を軽減するため、「家賃支援給付金」の創設に2兆242億円を盛り込みました。対象となるのは、売り上げが去年より、ひと月で50%以上減少した事業者や、3か月で30%以上減少した事業者で、中堅・中小企業は月に50万円、個人事業主は25万円を上限に、原則、賃料の3分の2を半年間給付します。また、複数の店舗を借りている事業者には、例外措置として、上限額を中堅・中小企業は100万円、個人事業主は50万円に引き上げます。ことし1月から3月までに創業した事業者も対象とし、申請には売り上げの減少を証明する書類のほか、家賃の契約書などが必要になる見通しで、中小企業庁が詳しい制度の設計を急いでいます。

▽持続化給付金
中小企業や個人事業主などに最大200万円を給付する「持続化給付金」について、対象の拡大などに対応するため原資として1兆9400億円を追加で計上しました。ことし1月から3月末までに創業した事業者で、いずれかの月の売り上げが1月から3月までの平均より50%以上減少したことを条件に給付の対象に加えます。また、フリーランスのうち、収入を「雑所得」や「給与所得」として確定申告していた人も、申請できるようにします。契約や支払いを証明する源泉徴収票や支払調書などの書類の提出が必要で、事業を行っていることを確認できた場合に対象になります。申請は原則、オンラインとし、6月中旬をめどに受け付けを始める方針です。

▽資金繰り支援・資本増強策
企業の資金繰り対策では、無利子無担保の融資などの上積みに加えて、企業の財務基盤を強化するため出資などの枠を設け、新たに94兆円規模の資金枠を設けます。この中では、経営が悪化する企業が増える中影響の長期化によって企業が資本不足に陥るのを防ぐため、融資や出資のための12兆円規模の資金枠を新たに設けます。政府系金融機関による「劣後ローン」と呼ばれる返済順位が低い融資や、日本政策投資銀行を通じた大企業や中堅企業向けの出資枠の上積みを行うほか、地域経済活性化支援機構などを通じた中堅・中小企業向けの出資や融資の枠を拡大します。さらに、政府系や民間の金融機関が実施している実質、無利子無担保の融資や日本政策投資銀行と商工中金を通じた特別な貸付制度「危機対応融資」の拡大など、67兆円規模の融資や保証の枠を設けます。

▽公的資金の注入しやすく
金融機関による資金繰り支援を後押しするため金融機能強化法を改正し、融資にあたる銀行や信用金庫の財務基盤が悪化するのに備え注入できる公的資金の枠を15兆円に拡大するとともに条件も緩和します。

農業 漁業への支援は

農業や漁業などの一次産業で、感染の拡大を防ぎながら販路の開拓などに取り組むための費用を補助する「経営継続補助金」を新たに設けます。

例えば、生産効率を高めるために新たな機械を導入する場合に、その費用の3分の2、最大100万円を補助します。

さらに、消毒や換気の設備など感染防止対策にかかる経費についても、50万円まで補助します。

外食需要の減少などで肉用の子牛の価格が急落していることを受けて、肉牛などの繁殖を手がける畜産農家を支援します。

子牛の品種ごとに基準価格を設定し、全国の平均価格がそれを下回った場合、奨励金として1頭につき1万円か3万円を交付します。

その他の政策

感染症対策や地域経済の活性化などのために設けた「地方創生臨時交付金」を2兆円増額し、3兆円とします。

休業した事業者への協力金や、店舗の賃料の支払いを支援するため自治体が行う負担軽減策の財源などとして活用することを想定しています。影響が長期化した場合に備えて、感染症対策の予備費を10兆円積み増します。

これにより、第1次補正予算で計上した分と合わせると11兆5000億円となりあらかじめ使いみちを定めない巨額の予備費を確保して必要な対策に柔軟に対応することにしています。

芸術家やアスリートを支援するため文化芸術やスポーツの団体などに最大150万円の支援を行い、活動維持を後押しするとしています。

こうした支援策に560億円を盛り込みました。

このほか、現金10万円の一律給付の申請でアクセスが集中しているマイナンバーカードのシステムを増強する経費として9億円、地域の公共交通機関での感染防止の対策に138億円を盛り込みました。

専門家「運用面に課題も 政府のサポートが必要」

今年度の第2次補正予算案についてSMBC日興証券のシニアエコノミスト、宮前耕也さんは、「第1次補正予算とあわせると事業規模としては200兆円を大きく超えて過去最大であり、予想より大きな対策となった。感染拡大のダメージを大きく受けた人たちに絞って給付を行うことで、所得の落ち込みをカバーする狙いがある」としました。

一方で経済的な効果については「大部分が給付であり、必ずしも支出に回るわけではないので、金額ほどの経済効果が出るかというとそうはならないと思う。景気のマイナスを和らげる効果はあるが押し上げる力まではないと見ている」と分析しました。

また、宮前さんは、今回、盛り込まれた賃料の支援策について「家賃補助などは、多くの企業にとっては助かる話だと思うが規模が大きい企業などにとっては足りないということもあるかと思うので違う手立ても今後考えられてくる可能性がある」と話しています。

さらに今後の政府の対応については「制度の運用面では、融資の窓口が混雑したり自治体の業務量が増えたりしたことで、なかなか進まないことが課題となっていて、政府の何らかのサポートが必要になっているのではないか」と指摘しました。