未知の素粒子「アクシオン」の兆候を捉えた可能性がある観測装置「ゼノン1T」の液体キセノンタンク(中央)=イタリア中部(国際研究チーム提供)
未知の素粒子「アクシオン」の兆候を捉えた可能性がある観測装置「ゼノン1T」の液体キセノンタンク(中央)=イタリア中部(国際研究チーム提供)

 未知の素粒子「アクシオン」が存在する兆候を観測した可能性があると、東京大などが参加する国際研究チームが17日、発表した。アクシオンは発見すればノーベル賞級ともいわれるが、現時点では観測精度が不十分という。年内にも稼働する新たな装置で存在を証明できるか注目される。

 アクシオンは1977年にイタリアなどの研究者が存在を予言。原子核を結びつける「強い力」の理解に不可欠で、発見は素粒子物理学の基本法則である標準理論の修正につながる。

 研究チームは、イタリアで2018年まで稼働していた観測装置「ゼノン1T」のデータを解析。タンク内の液体キセノンから発生した光や電子の信号のうち53回分が、未知の原因による信号で、そのエネルギーや質量などから太陽で生まれたアクシオンによる可能性が高いと結論づけた。

 観測の精度は過去最高の99・98%に達したが、素粒子物理学の世界で発見と認められるには、99・9999%が必要とされる。

 東大宇宙線研究所の森山茂栄教授(宇宙素粒子物理学)は「仮にアクシオンなら、標準理論で足りなかった部分を補完できる大きな成果だ。今後の観測で明らかにしたい」と話す。

 アクシオンは、宇宙を構成する物質の27%を占める正体不明の暗黒物質の候補でもあるが、今回は暗黒物質とは直接関係しない別のタイプという。