停滞を続ける合流協議。国民民主党の玉木雄一郎代表は直談判に打って出た。

 6日の広島市原爆死没者慰霊式・平和祈念式の会場で、居合わせた立憲民主党の枝野幸男代表に「近いうちに会合を持っていただけないか」と持ちかけた。しかし枝野氏は「幹事長に任せている」と拒否した。

合流協議は1月に破談になっていた=2020年1月10日、国会内、岩下毅撮影

 7月に再スタートした立憲・国民両党の合流協議は、新党名の扱いを巡り難航している。立憲が「立憲民主党」の党名を引き継ぐことを提案したのに対し、国民は投票を念頭に「民主的な手続き」で決めることを逆提案。両党の幹事長間で話し合いを続けたものの、「いい知恵」が出ず折り合いがつかない。

 業を煮やした玉木氏は8月4日の記者会見で、打開策としてトップ会談を呼びかけた。翌日、国民の平野博文幹事長が玉木氏の意向を立憲側に伝えた。しかし立憲の福山哲郎幹事長は「幹事長間で協議しており判断のしようがない」と党首会談を拒否。6日午前も両幹事長は会談したが、進展していない。

 なぜ枝野氏は党首会談に後ろ向きなのか。党首会談までしたのに合流協議が破談した、1月の苦い記憶がある。そのときは衆院の赤坂議員宿舎で缶チューハイを手に、2人は事前に秘密裏に話し合っていた。それでも玉木氏は首を縦に振らず、協議は打ち切りになった。

 それから半年。冗舌な玉木氏に対し、枝野氏は発言を控える。5日、記者団から繰り返し合流協議の質問を受けた枝野氏は、「福山幹事長に全権委任している」といらだちをあらわにした。

国民民主党の玉木雄一郎代表

 一方の玉木氏はこれまで、昨夏の参院選で両党が対決した際のしこりが参院側でなお残っていることなどから、党名の丸のみはできないと主張。また、安倍1強政治に対抗する民意の受け皿を作るには「大義」がいるとの考えで、消費減税や憲法への考え方を一致させることも立憲側に投げかけている。

立憲民主党の枝野幸男代表

 党名に強いこだわりがあり、党内に護憲派を抱える立憲側は、そんな玉木氏に態度を硬化させている。玉木氏は本音では合流に反対なのではないかとの疑念すら生まれている。そうした見方について、玉木氏は6日の会見で「潰そうと思って何か言っているというのは完全な邪推だ。まとめるつもりで会いたい」と否定してみせた。

 コロナ禍の苦しみを横目に合流交渉が長引くほど、たとえ新党ができたとしても国民からの支持は得づらい。玉木氏も早急に協議をまとめる意向を周囲には示しており、この日の会見でも「虚心坦懐(たんかい)、腹を割って、どういう政策で安倍政権に向き合うのか。トップ同士で会談したい」。拒まれてもなお、枝野氏にラブコールを送り続けた。(山下龍一)