【ベルリン時事】120人にほぼ無条件かつ非課税で3年間月1200ユーロ(約15万円)を給付し、労働状況や消費行動など生活全般に変化が起きるかを調べる社会実験が、ドイツで始まることになった。格差是正などのため現金を一律支給する「ベーシックインカム」(最低限所得保障制度)の有効性を調べるのが目的で、新型コロナウイルスによる失業が広がる中で大きな注目を集めている。
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実験を主導するDIW経済研究所などが18日から、独在住で18歳以上という条件のみで参加者を募集。希望者が殺到し22日時点で120万人に達した。応募者から年収や家族構成などを考慮し、給付を受ける120人と、給付なしで比較対象として参加する1380人を選ぶ。給付は来春からで、参加者は半年に1回、オンラインで労働状況や時間の使い方などの質問に答える。1回の所要時間は25分ほどという。
資金は寄付で賄う。DIW上級リサーチフェローのユルゲン・シュップ氏は実験サイトに寄せた動画で「世界でも、この分野で信頼に足る研究結果はまだない」と述べ、実験の成果に期待を示した。
ベーシックインカムは所得や仕事の有無にかかわらず、最低限の生活を保障できる現金を一律支給する構想。貧困対策としての側面に加え、人工知能(AI)などに人間の仕事が奪われる可能性が議論される中、収入を気にせず充実感のある活動に専念する道を開くと、注目が高まっている。
米電気自動車(EV)メーカー、テスラのマスク最高経営責任者(CEO)ら、先進的企業の経営者にも支持者が多い。ただ、財政負担や労働意欲喪失の懸念もあり、本格導入する国はまだない。スイスでは2016年の国民投票で、8割近くの反対で否決された。