安倍首相が28日に辞任表明したことを受け、自民党は後継の総裁選びに入る。党内では菅官房長官や岸田政調会長、石破茂・元幹事長らを推す声が出ており、今後、派閥間での駆け引きが活発化しそうだ。

 菅氏は28日の記者会見で、新型コロナウイルスへの対応について、「毎日、私が定例の記者会見で質問に答え、政府の取り組みを説明している」と強調した。2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、政権の屋台骨として首相を支えてきた。ポスト安倍に菅氏が浮上しているのは、コロナ禍への対応などから「政権の継続性が必要」(党幹部)との声が出ているためだ。

 菅氏は二階幹事長との関係も良好で、二階氏も「立派な指導者として活躍している」と高く評価する。ただ、菅氏は総裁選出馬について「まったく考えていない」と否定している。

 岸田氏は28日、訪問先の新潟市でポスト安倍への意欲を記者団に問われ、「変わらない」と語った。首相辞意の一報を受け、すぐに東京に戻ったが、党臨時役員会には間に合わなかった。同日夕には、都内で開かれた岸田派の緊急会合に出席し、「次をしっかり担っていかなければならない」と語気を強めた。

 岸田氏は第2次安倍内閣発足後、外相を約4年7か月務めた。首相の信頼が厚く、麻生副総理兼財務相も期待を寄せる一人とされてきた。最近は岸田氏自身も積極的にメディアへの露出を増やし、課題の発信力強化に腐心している。

 ただ、新型コロナ対策では、岸田氏が主導した減収世帯への30万円給付案がひっくり返された経緯があり、他派閥からは「有事に国を束ねる指導力に乏しい」との見方もある。

 過去に3度の総裁選出馬経験がある石破氏は、28日夜のBS番組で、不出馬という選択肢があるのかを問われ、「そんな無責任なことはできない」と述べ、4度目の出馬に重ねて意欲を示した。石破氏は党員の人気が高く、報道各社の世論調査ではポスト安倍候補の首位に立つことが多い。この日出演した別の民放番組では「党員の権利をきちんと尊重するのは必要だ」と述べ、党員投票が望ましいとの考えを示した。

 しかし、国会議員の支持は広がりを欠く。石破派所属議員は19人にとどまり、総裁選出馬に必要な20人の推薦人は自派だけで確保できないのが現状だ。