• 携帯電話料金の引き下げや地銀再編など個別分野の規制改革を表明
  • おかしな部分徹底的に見直す、縦割り・既得権益・前例主義を打破-菅氏

16日に首相に就任予定の自民党の菅義偉総裁は、新政権の経済政策についてアベノミクスの継承を表明している。新型コロナウイルス禍で金融・財政政策は現行路線を引き継ぐことが見込まれる中、ミクロ分野の規制改革が「スガノミクス」の旗印となる見通しだ。

  菅氏は14日夕、総裁就任後に開いた記者会見で、「おかしな部分があれば徹底的に見直し、この日本の国を前に進めていきたい」と表明。「役所の縦割り、既得権益、前例主義、こうしたものを打倒し、規制改革をしっかり進めていきたい」と強調した。

  菅氏は携帯電話料金のさらなる引き下げや地方銀行の再編など個別分野の構造改革で具体論に踏み込んでいる。一方、金融政策や財政政策では安倍晋三政権のアベノミクスを継承するとの発言にとどまる。消費増税についても今後10年は不要との考えを示した。 

自民党の菅義偉新総裁(9月14日)
自民党の菅義偉新総裁Photographer: Nicolas Datiche/Sipa Press/Bloomberg

  明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは、金融・財政は「当面は誰がやっても継承的な政策にならざるを得ない」と分析。菅氏が焦点を当てている改革はミクロ政策で、「それを集めて一本筋の通ったマクロ経済対策としてまとめ上げていくのが当面の課題だ」と指摘した。

  アベノミクスは、大胆な金融緩和と機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」を柱とし、経済成長とデフレからの脱却を目指した。第2次安倍政権発足当時から株価は2倍余りとなり、円高を是正して為替市場を安定させた。

  ただ、出口の見えない金融緩和政策が続く中、超低金利の長期化に伴う金融システムへの影響など副作用も目立ち始めている。新型コロナの感染拡大により財政支出は拡大、実質国内総生産(GDP)は第2次安倍政権発足以前の水準に戻った。

第二次安倍政権以前に逆戻りhttps://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/bb74b69b2dd245358c08df704942f133.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

出所:内閣府・実質GDP

  野村証券の美和卓チーフエコノミストは地方や中小企業の生産性の低さがアベノミクスに残された課題として残っていると指摘。菅氏が強調した地銀再編は、中小企業の再編と対になるものだとし、「マクロの経済力を高める上で、中小企業や地域金融機関の改革という認識は正しい。間違っていない」と語った。  

  14日の会見では、規制改革を徹底してやり向くために「改革意欲のある人、改革に理解を示してくれる人」を中心に人事を進めると説明。さらに「思い切って私の政策に合う人を登用」すると語った。

自民党総裁就任会見での主な発言(14日)
・総理・総裁がしっかりした方向性を示して、各閣僚と一体となって仕事行いたい
・適材適所、改革意欲のある人はいろんな派閥に散らばっている-閣僚人事
・二階幹事長、麻生副総理は内閣の要、党の要。極めて政権運営で重要な2人
・まだ決めていない-民間人の登用
・コロナ収束、経済再生が国民の大きな声。コロナを徹底して収束にもっていく
・解散時期はなかなか悩ましい問題
・デジタル庁設置、法改正に向けて早速準備したい
・憲法改正に挑戦していきたい