自民党は19日、デジタル社会推進本部(本部長・下村博文政調会長)の初会合を党本部で開き、菅義偉首相が看板施策に掲げた「デジタル化」に向けた議論を本格化させた。「マイナンバー」などテーマ別に五つの小委員会を設置。政府が2021年を目指す「デジタル庁」設置に向けた中間提言を11月半ばにもまとめる。21年度当初予算案、税制改正のデジタル関連の審査も一元的に担う。
デジタル本部は関係部会長らを交えた政調の横断組織として発足。実務を仕切る座長には産業政策に詳しい甘利明税調会長(元経済再生担当相)が就いた。首相は目に見える成果を早急に出したい意向で、党側が応える形となった。
初会合には政府側から平井卓也デジタル改革担当相が出席した。平井氏は21年1月召集予定の通常国会に、IT基本法改正案などデジタル庁設置関連法案を「7~8本」提出すると表明。デジタル庁設置について「スケジュール的には霞が関の常識を超えたスピードにならざるを得ない」とし、協力を呼びかけた。
甘利氏は省庁や国・地方間のシステムが異なるため連携が進まず、新型コロナウイルス対策での給付金支給やPCR検査拡充などに支障を来したことをふまえ「我々は歩むべき方向を間違っていたと、嫌というほど思い知らされた」と指摘。デジタル化の本格推進と26年度末を目標とする国・地方のシステム一体化に向けて「想像を絶する抵抗が出てくる。砕氷船として航路を開いていく」と檄(げき)を飛ばした。
民間のITを活用した業務変革「デジタルトランスフォーメーション」も同時並行で進めるとし、新設の「デジタル施策調査小委員会」で民間企業などのデジタル化推進策を検討する。情報流出など懸案が多い個人情報保護策は「データ利活用小委員会」で検討。IT基本法改正案など改革の本丸部分は本部で直轄し、本部と各小委員会合わせて「週3回」(甘利氏)と急ピッチで議論を重ねる方針だ。
甘利氏は会合後、記者団に「個別最適・全体不最適のシステムはすべて廃棄する」と表明。既に財務省に対し、省庁や地方独自のシステム更新関連予算案は厳しく査定するよう指示したと明らかにした。
もっとも、デジタル関係の所管は総務省、経済産業省、財務省など各省にまたがり、どこまでデジタル庁に権限と予算を集約できるか予断を許さない情勢だ。
河野太郎行政改革担当相が打ち出した「脱はんこ化」を巡っても、自民党の「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(はんこ議連)」が8日、二階俊博幹事長らに「行き過ぎた『脱はんこ化』で押印に対する信頼が揺らいでいる」と懸念を伝達。二階氏も「署名を集めてしっかり反抗しろ」と賛意を示すなど、党内では性急なデジタル化への反発もあり、意見集約は難航も予想される。【飼手勇介、遠藤修平】