• 開発費や人員を大幅削減の方向、30日発表の中期計画で説明へ-報道
  • 08年に開発スタート、これまで6度にわたり納入を延期していた

三菱重工業が、国産初のジェット旅客機事業を事実上凍結する方向で最終調整していることが分かったと、共同通信が22日報じた。新型コロナウイルスの流行で、 航空需要の回復が当面見込めないと判断した。報道を受けて同社の株価は23日、一時2カ月半ぶりの日中上昇率をつけた。

パリ航空ショーで展示されたスペースジェットの機体(2019年6月)Photographer: Jason Alden/Bloomberg

  報道によると、三菱重は「スペースジェット(旧MRJ)」の開発費や人員を大幅に削減して事業を事実上凍結する方向で最終調整し、30日に発表する中期経営計画で詳細を説明するという。将来の事業再開に備えて運航に必要な国の「型式証明」の認証取得に向けた活動は継続。今後の航空需要の動向を見ながら、 事業を再開させるかどうかを検討するとみられるとしている。

  三菱重は23日に公表したコメントで、報道について当社が発表したものではないとした上で、スペースジェットについて新型コロナ影響も踏まえ、「引き続き開発スケジュールの精査を行うとともに、現下の当社グループを取り巻く厳しい状況を考慮した適正な規模の予算で開発を推進」しているとし、さまざまな可能性を検討していることは事実だが、「開発の凍結を決定した事実はない」とした。

  報道を受けて同社の株価は同日、一時8月11日以来の日中上昇率となる前日比4.8%高の2331円まで上昇した。ブルームバーグ・インテリジェンスの北浦岳志アナリストは、これまで長きにわたって開発遅延が続いてきたスペースジェット事業は投資家からの信頼を失っていたとし、凍結の「判断を今回するのであれば、それはそれで必ずしも悪い受け止めではない」と指摘。その上で、むしろ「もうちょっと早く判断した方がよかったのかどうか」と考える向きも多いのではと述べた。

  スペースジェットは2008年に開発がスタートし、三菱重はこれまで6度にわたり納入を延期していた。新型コロナウイルスの影響で旅客需要は激減し航空業界の経営環境は悪化しており、スペースジェット事業での損失の影響で前期(20年3月期)の事業損益が295億円の赤字に転落していた。