- ネステから代替航空燃料を購入-今後は長期契約で取引も
- 航空業界でCO2排出量削減の取り組み加速、供給確保の動き活発化
環境活動家グレタ・トゥンベリさんをきっかけに注目を集めた、二酸化炭素(CO2)を大量に排出する空の旅を手控えるよう呼びかける「飛び恥」運動が欧州などで広がる中、国内航空大手のANAホールディングスも温室効果ガスの排出削減に向けて動きを加速させている。
ANAHD傘下の全日本空輸によると、同社がフィンランドに本社を置くネステから購入した約7000キロリットルの「持続可能な航空燃料(SAF)」が24日、羽田空港に到着した。これは大型旅客機「ボーイング777」で東京-ロンドン間を25往復飛ぶのが可能な量。
今回は1回だけの取引だが、両社は先月、長期契約についても今後協議することで基本合意しており、全日空は2022年に生産能力を増強する予定のネステのシンガポール工場からSAFを調達することを計画している。同社は廃食油や動物性、植物性の油脂など環境負荷の低い原料を使って燃料を生産している。
気候変動問題に対する関心の高まりを受け、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)が21年以降は国際線でCO2の排出量を増加させない目標を掲げている。航空各社が加盟する国際航空運送協会(IATA)も50年までに05年比で排出量を半減するなどの行動計画を策定している。
欧州を中心に「飛び恥」運動が大きく広がっているほか、日本政府も26日にCO2など温室効果ガスの排出量を50年までに実質ゼロとする方針を明らかにする見込みであることから、航空各社は目標達成に向けた取り組みを加速させる必要に迫られている。
ANAHDのサステナビリティ推進部マネジャーの杉森弘明氏は、当面は排出量取引制度を活用すればいいという雰囲気が航空業界全体にあり、「慌てる必要はないと思っていた」と振り返る。しかし、グレタさんの活動をきっかけに飛び恥に対する関心が高まったこともあって、昨年頃から積極的にSAFを調達する方向に切り替えたという。
ANAHDのCO2排出量
2050年までに05年比で航空機運航で発生する排出量の半減目指す
出典:ANAHD
備考:航空機の運航で発生するCO2排出量の年度データ
新型コロナウイルスの影響による移動制限などで旅客需要は急減し、航空会社の多くが苦境に陥っている。杉森氏は従来のジェット燃料より割高なSAFの導入を手控える動きが「多少はあるかもしれない」とする一方で、CO2排出権を海外で調達して排出量を相殺することに対しても厳しい目が注がれるようになったことから、安易には選択できないと話した。
ANAHDは中長期環境計画で、21年3月期までの代替航空燃料の本格使用開始の検討を掲げている。米ランザテックとは昨年6月、エタノールを原料に米国で製造するSAFを21年以降に購入することで合意している。
全日空の調達部エネルギーチーム、吉川浩平マネジャーによると米国にあるランザテックの実証プラントから数年間燃料を調達するほか、米国内外での生産拡大にあわせて購入量を増やす「二段重ねの提携を考えている」という。