菅義偉首相が初めて所信表明演説に臨んだ。携帯電話料金の引き下げなど肝いり政策を並べ、新たに2050年までの脱炭素社会の実現も掲げた。ただ、目標達成への具体策は乏しく、その実現性は未知数。日本学術会議の任命除外など演説で触れなかった問題も含め、今後の国会論戦で説明を迫られることになる。
9月の就任から41日目という、2000年以降では最も遅いタイミングで臨んだ菅首相の初の国会演説。その内容は、「ふるさと納税」や「インバウンド(訪日外国人客)」など前政権で自ら牽引(けんいん)した実績と、「デジタル庁」の創設や不妊治療への公的支援などこれから取り組む肝いりの「改革案」で彩られた。
首相周辺は「個々の政策を伝えたいとの思いが強かった」と解説。抽象的な理念を語るより、実績と改革案を並べることで実行力を誇示し、新政権への期待を高める狙いがある。
その中で目玉に据えたのが「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と打ち出した「グリーン社会の実現」だ。演説がこの部分に差し掛かると、読み上げていた紙から目を離して前を向き、「脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言する」と力を込めた。
エネルギー政策で長期的な目標を掲げることで、「見えにくい」とされてきた首相の社会像につながる政策の柱に位置づけ、「本格政権」への足がかりにしたい考えだ。脱炭素社会は、従来立憲民主党など野党が力を入れてきた政策でもある。立憲の枝野幸男代表が「自然エネルギー立国」として同様の方針を掲げており、野党の支持層を取り込む思惑も透ける。
政権への期待を高めるねらいは、経済への訴えにも強くにじんだ。首相は演説の冒頭、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組む姿勢を示したうえで「社会経済活動を再開して経済を回復していく」と強調。コロナ禍のもとでも「ちゅうちょなく必要な対策を講じていく」と訴えた。温室効果ガスの実質ゼロについても「経済成長の制約ではない」と主張。「大きな成長につながるという発想の転換が必要だ」と述べた。
「自分でできることは、まず自分で」
とはいえ、これらの政策の具体…