【ニューヨーク時事】トランプ大統領は、激戦州での票集計をめぐり不正を訴え、法廷闘争を展開した。米大統領選をめぐる法廷闘争は、2000年以来。総得票数ではなく各州に割り当てられる選挙人獲得数で勝者が決まる複雑な選挙制度について、見直しを求める声が上がったこともあるが、憲法上の問題や党派対立で挫折してきた。

 共和党のブッシュ(子)氏と民主党のゴア氏が争った00年の選挙では、フロリダ州の一部地域の集計が問題となった。投票所の器具で投票用紙に穴を開けて集計機で読み取る方式だったが、穴の開け方が不十分だとカウントされず、さらに得票差が僅差だったため、州法の規定で再集計が始まった。

 当初、優勢とされたブッシュ氏だが、再集計により票差が縮まったことに危機感を募らせた。ブッシュ陣営は手作業の再集計差し止めを求め、最終的に連邦最高裁がこの主張を認め、ゴア氏の敗北宣言により、投票日から36日後に決着した。

 今回の大統領選で、トランプ氏が問題視しているのは郵便投票。新型コロナウイルス感染が深刻化し、感染防止策の一環として郵便投票を選択する米国民が急増し、7000万人以上が利用したとされる。トランプ氏は郵便投票を「不正の温床」と批判してきたが、その証拠は示していない。

 法廷闘争には至らなかったが、大接戦となった1960年のケネディ、ニクソン両氏が争った選挙でも、テキサス、イリノイ両州での不正が指摘された。

 時代はさかのぼるが、1876年の大統領選では、民主党のティルデン氏が得票で上回っていた。しかし、フロリダなど計20人の選挙人の票をめぐり論争が起き、議会に設置した選挙委員会の裁定で、20人の票が共和党のヘイズ氏に割り当てられ逆転勝利となった。