日本銀行は10日、地方銀行や信用金庫が保有する日銀当座預金に0.1%の追加的な付利を行う制度を導入すると発表した。経営統合など経営基盤の強化を図ることが要件で、2022年度まで3年間の時限措置として実施する。同日に開催した政策委員会の通常会合で決定した。
地域経済を支えながら経営基盤強化に取り組んだ地域金融機関を後押しし、金融システムの安定を確保するのが狙い。0.1%の特別付利を受けるには、地域経済の持続的な発展に貢献する方針であることを表明するとともに、経営基盤の強化を図ることが要件となる。
具体的な経営基盤強化策としては、1)経費率(OHR)の一定比率以上の改善(3年間で4%以上など)、2)経営統合などで経営基盤の強化を図る-のいずれかが必要。合併や経営統合などを行う場合は、23年3月末までに機関決定を行うとともに、統合が経営基盤の強化に資することを日銀が統合計画などで確認する。
特別付利は所要準備額を除く当座預金残高に対し、準備預金制度の積み期単位で実施。地銀が地銀以外の銀行や銀行グループ、事業会社などと経営統合を行う場合は、当該地銀のみに対して特別付利を行う。
対象先に日銀取引先以外も
日銀の当座預金取引先ではない信用組合、労働金庫、農・漁協など他の地域金融機関を対象とするかは関係先との協議も踏まえて決定する。
日銀では、日本の金融システムは「全体として安定性を維持している」と判断しているが、長引く低金利環境と人口減少などの構造問題が地域金融機関の経営を圧迫しており、「収益力低下が継続する場合には、金融仲介機能の円滑な発揮が妨げられる可能性もある」としている。
高口博英金融機構局長によると、同制度を3年間の時限措置としたのは「地域金融機関の早期の取り組みを促す」のが狙い。当座預金取引先の全ての地銀と信金を対象に特別付利を行う場合、年間で400億-500億円の支払いになるという。
りそなホールディングスの南昌宏社長は同日の決算会見で、完全子会社化する方針の関西みらいフィナンシャルグループの経費率が80%を超えていることに触れ、「コスト構造を変えていくことが使命であり、サポートいただけるのは大変心強い」と日銀による新制度の導入を歓迎。地銀再編の後押しになるかとの質問には「特にこのために行うわけではないが、一つのサポート要因になる」との認識を示した。