日本政府が東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議でまとめられる成果文書をめぐり、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)や巨大経済圏構想「一帯一路」に関する文言の削除を求めていることが12日、分かった。一方、中国は日本が主導する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を念頭に、地理的概念を含む「インド太平洋」を盛り込むことに反対しており、日中両国がASEANを舞台に牽制(けんせい)し合っている形だ。

 ASEAN外交筋が明らかにした。それによると、中国政府は14日にテレビ会議形式で開かれるASEANと日中韓3カ国(ASEANプラス3)の首脳会議、米露も含む東アジア首脳会議(EAS)などでまとめる声明で、AIIBに言及するよう主張。日本は「特定の国がイニシアチブ(主導権)を持つ内容を入れるのは不適切だ」と反対し、米政府なども同様の立場を取っているという。

 昨年11月のASEANプラス3では交通インフラの整備などを盛り込んだ「連結性イニシアチブ」に関する共同声明でAIIBに言及した。だが、AIIBなどを活用したインフラ投資の結果、中国が返済に窮した発展途上国に政治的要求を突き付ける「債務の罠(わな)」が関係国の懸念を招いており、日本による削除要求はこうした動きを牽制する意味もある。

 一方、中国側は日本主導のFOIPを連想させる文言を成果文書の草案から削除するよう要求。ASEANが昨年6月に採択した「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」にも反対している。中国は昨年のEAS議長声明などでAOIPへの言及を認めたが、日米が主導する対中封じ込めにつながる恐れがあると警戒を強めたとみられる。