熊谷亮丸内閣官房参与(大和総研専務取締役)は、来月編成する第3次補正予算で数兆円から10兆円の基金を設立し、菅義偉首相が注力する脱炭素化を中心としたグリーン化とデジタル化に振り向けるべきだと話した。

  熊谷氏は17日のインタビューで、行政手続き合理化だけでも1人当たり国内総生産(GDP)が1%以上上がると試算しており、デジタル化とグリーン化による生産性向上が実現する経済構造に転換すれば「はるかに大きな経済効果がある」との見方を示した。また、単年度予算では民間企業はリスクを取りにくいため、数年間で投資する基金を作ることで「集中的に資源を投入していくことが必要」と述べた。

Source: Daiwa Institute of Research

  基金を使って具体的に行う施策としては、電気自動車や次世代電池などの新技術支援を挙げた。2021年度末に想定される需給ギャップを埋めるため、3次補正予算全体の規模は予備費分も含めて15兆円程度が必要とみている。

  内閣官房参与に先月任命された熊谷氏は今月10日に菅首相と会い、経済情勢や施策について助言した。デジタル化など規制改革を進める考えを示してきた菅首相は10月の所信表明演説で、50年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする方針を掲げ、脱炭素社会の実現を目指すと宣言している。

  基金創設を巡っては、武田良太総務相が13日、5Gの次の世代の研究開発体制を強化するための基金創設を第3次補正予算案に盛り込む方針を明らかにしたとNHKが報じた。麻生太郎財務相は17日、運用次第で「全然意味のない基金になったりすることもよくある話」と述べ、効果の見極めが必要との見解を示した。

GDPギャップから見る需要不足

21年度末は15兆円前後と予想

内閣府:20年4-6月期まで実績、7-9月期は見通し、21年度末は熊谷氏の予想

  新型コロナウイルス感染拡大により、欧州各国でロックダウン(都市封鎖)など行動制限が再び強化される中、日本でも新規感染者数が増加している。菅首相にとっても感染抑制と経済との両立が課題だ。

  熊谷氏はコロナ禍は「ある程度長期化する可能性がある」と指摘。緊急事態宣言で数カ月間、国全体の経済を閉じるようなことになれば、来年も「マイナス成長の可能性が出てくる」と分析した。

  財政再建については、経済がコロナ前の水準に回復する「3-5年の時間軸」で考える必要があり、「今すぐに財政再建に着手する状況にはない」と述べた。

  金融緩和と財政政策、成長戦略を「3本の矢」とするアベノミクスについては、「金融政策に頼り過ぎ、成長戦略は道半ばに終わった」と評価した。菅政権に追加金緩和余地はほとんどなく「ボールは政府に投げられている」とし、3本目の矢の成長戦略の強化で、特に規制改革デジタル化グリーン化などをしっかりやるかどうかが今後の日本経済のカギとみる。