【ワシントン時事】ブッシュ(子)米政権で北朝鮮外交を担当したビクター・チャ戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問は9日、時事通信のインタビューに応じ、バイデン次期政権は、北朝鮮との非核化交渉の前に核計画凍結を優先すべきだと主張した。その上で最終的な非核化に向けた段階的なアプローチを提案した。
北朝鮮「米刺激控えよ」と指示 次期政権にらみ在外公館に―韓国情報機関
チャ氏は、(1)寧辺核施設の活動凍結(2)米朝関係の改善(3)核・ミサイル実験禁止などで脅威の削減(4)非核化―の4段階を提案。クリントン政権やブッシュ(子)政権の交渉では、非核化措置の検証で頓挫してきたことを踏まえた戦略だ。拡大し続ける核開発をまず抑制し、平和宣言などで関係改善を図る。それから検証や非核化の交渉に臨むシナリオを描く。
ただ、非核化前に関係改善を進めることは、一時的だとしても北朝鮮の核保有を事実上認める格好になる。日本で懸念が高まる可能性があるが、チャ氏は、ミサイル防衛強化や日米の合同攻撃能力の検討などによる抑止力向上で日本に配慮すべきだと主張。「日本の協力がなければ、この戦略は機能しない」と訴えた。
新型コロナウイルスの影響については、防疫強化で国境を封鎖する北朝鮮が経済的な苦境から目をそらすために対外的に好戦的な姿勢を取る恐れがあると懸念する。一方で、国際社会からの人道支援の提供などで対話の機会をもたらす可能性もあると強調した。
2018年の平昌冬季五輪では、米朝や南北関係改善を目指し金正恩朝鮮労働党委員長の妹、与正氏が訪韓した。チャ氏は「(来年7月開幕の東京五輪に合わせて)与正氏が東京を訪問するかもしれない」と指摘。「米朝や日朝、南北関係のいずれでも、彼女の役割は重要だ」と述べた。
一方、トランプ大統領が推進した正恩氏との首脳外交については「非核化という点で何ももたらさなかった」と批判。バイデン次期政権は実務レベルを重視する伝統的な外交を進めると分析した。