[ワシントン 28日 ロイター] – 米商務省が28日発表した2020年の実質国内総生産(GDP)速報値は前年比3.5%減と、1946年以来の大幅な落ち込みとなった。新型コロナウイルスの危機によってレストランや航空などのサービス業が打撃を受け、何百万人もの人が失業し貧困に陥った。

19年GDPは2.2%増だった。年間のGDPが落ち込んだのは07─09年の世界金融危機以来。米経済は20年2月に景気後退(リセッション)入りした。

昨年は政府部門と住宅部門を除くほぼ全てのセクターが縮小。経済の3分の2以上を占める個人消費は3.9%減少し、1932年以降で最大の落ち込みになった。

20年第4・四半期GDPは年率換算で前期比4.0%増と、新型コロナ危機からの回復が勢いを失っていることを示した。年末にかけて感染が再び拡大したほか、政府による3兆ドル近くの支援策の資金が枯渇したことが抑制要因となった。第4・四半期の伸びは市場予想と一致した。

米連邦準備理事会(FRB)は27日、政策金利をゼロ近辺に据え置いたほか、債券買い入れを通して市場に資金を投入し続ける姿勢を主張した。「経済活動と雇用の回復ペースはここ数カ月間で鈍化した」との見方を示した。

バイデン米大統領は1兆9000億ドル規模の新型コロナ経済対策を発表している。政府は昨年12月末に9000億ドル近くの支援策を導入したばかりで、一部の議員は対策の規模が大きすぎると懸念を示している。バイデン氏はGDP統計を用いて、反対派に圧力を掛ける可能性がある。

ブライアン・ディーズ国家経済会議(NEC)委員長は、今回のGDP統計で議会がバイデン大統領の経済支援策を早急に可決する必要性が如実に示されたとし、何も行動を起こさなければ高すぎる代償を払うことになると警告。「迅速に行動しなければ、経済危機が継続し、国民が職場に復帰し、危機から立ち直るのが一段と困難になる」と述べた。

MUFGのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は、「最終需要が回復しない限り、経済はリセッション(景気後退)の崖っぷちから離れられない」と述べた。

第4・四半期は追加対策がなかなか導入されない中で消費支出が抑制されたほか、コロナ感染が急増し、好調な製造業と住宅市場による押し上げの勢いを抑制した。

第3・四半期GDPは33.4%増と過去最大の伸びを記録していた。第4・四半期に景気が大幅に減速したことから20年末のGDPは19年末の水準を大幅に下回った。感染が依然として制御できない中で、エコノミストは21年第1・四半期GDPが一段と鈍化するとみている。夏までには、追加支援策が導入されるほか、ワクチン接種を受けた人口が増えることからGDPの伸びが加速するとの見方だ。

オックスフォード・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、バイデン大統領の経済支援策は1兆2000億ドル規模に縮小されるが、7月までに米国民の3分の2にワクチンが普及し、春には雇用が加速すると予想し、「今年の個人消費の伸びは記録的なものになるとみている」と述べた。

新型コロナがもたらした景気後退は、特にサービス業へ打撃となった。影響を受けたのは、人種的少数派や女性であることが多い低賃金労働者に偏っている。高所得者と低所得者の二極化が進む、いわゆる「K字型」回復につながっている。

景気回復は、住宅市場と製造業がけん引している。雇用を維持している人口が、広い家を求めて都市部から郊外へ移動しているほか、在宅勤務・学習のために電子製品を購入しているためだ。製造業のGDPに占める割合は19年末の11.6%から11.9%に上昇した。

シカゴ大学とノートルダム大学の教授が先週発表した報告書によると、20年下半期に米国の貧困率は2.4%ポイント上昇し、11.8%となった。貧困層人口は810万人となった。

貧困層の増加は労働市場の弱さが長引いていることに反映されている。米労働省がこの日に発表した23日までの1週間の新規失業保険申請件数は84万7000件だった。

12月の雇用者数は8カ月ぶりに減った。20年3月と4月に失った2220万件の雇用のうち、回復した雇用件数は1240万件にとどまる。