[東京 9日 ロイター] – 東芝は9日、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズから受けた買収提案について、詳細な情報を受け取った場合は「慎重に検討していく」とする声明を発表した。日本経済新聞が同日報じた提案内容によると、政府系ファンドなどと1株5000円で公開買い付け(TOB)する。複数の関係筋によると来週にも詳細な提案が示される見通しで、東芝は豊原正恭副社長を中心とした検討チームを立ち上げるなどして内容を検証する。

東芝の永山治取締役会議長はこの日の声明で、CVCの提案は各国競争法や日本の外国人投資家規制など多くの条件を満たす必要があると指摘。CVCが単独ではなく他の投資家と組むこと、金融機関から資金を調達することを前提としていることに言及した上で、「検討には相応の時間を要し、複雑性を伴う」とした。

日経は同日夕、CVCは産業革新投資機構や日本政策投資銀行、国内の事業会社の参加を想定していると報道。7月初旬から1株5000円で公開買い付け(TOB)を始めて10月の上場廃止を見込むとしている。約3年後の再上場を目指すという。

複数の関係筋よると、東芝は豊原副社長を中心とした社内チームに加え、社外取締役や有識者など外部メンバーで構成する特別委員会も設置する考え。取締役会は両組織から報告を受け、提案の受け入れ可否を議論する見通し。

東芝は、「詳細情報を受領した場合は慎重に検討する」としている。

東芝の車谷暢昭社長は、CVC日本法人の会長を2017年から18年まで務めた。藤森義明社外取締役はCVC日本法人の最高顧問を務めている。

永山取締役会議長は声明の中で「(買収提案は)当社の要請によるものではなく、当社の事業についての詳細な検討を経た上で行われていない」とした

車谷社長は9日朝、ロイターなどの取材に対し、CVCの提案を踏まえ「利害関係など余計なものが入り込まないよう、完全にシャットダウンすることが重要」と語った。

東芝は不正会計問題や米原発子会社の巨額損失で経営危機に陥ったことを受け、2017年に6000億円の第三者割当増資を実施。アクティビスト(物言う株主)の保有比率が高まり、株主総会の運営などの企業統治(コーポレートガバナンス)や資本政策を巡り意見が対立していた。

東芝は3月、筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントなどの要請を受けて臨時株主総会を開き、昨年7月に開催した定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める株主提案を可決した。