日本政府に対する元慰安婦らの賠償請求を退けた21日のソウル中央地裁判決は、国内外の判例と相いれない内容が議論を呼んだ1月の確定判決を全面的に否定し、国際法を軽視した司法判断に警鐘を鳴らした。
1月の確定判決は、国際法に基づく「主権免除」の原則について「恒久的な価値はない」などと強調。同原則を適用せず日本政府を訴訟に引き入れることを「画期的な判断」(韓国メディア)と誇示した。
これに対し、21日の判決は国際司法裁判所(ICJ)や国内の判例を列挙して検討。「通常の解釈を行えば、国際慣習法の一部を否定するのは難しい」として同原則の適用を認めた。
日韓両政府が外交による問題の解決を目指した2015年の合意に対しても、両判決の評価は正反対に分かれた。前回判決が「被害を受けた個人の賠償が含まれていない」と否定的な評価を示した一方、今回は韓国政府の国内手続きに問題があったと認めた上で「裁量権を逸脱、乱用したとまではいえない」と判断した。
判例を軽視した判断に懸念を示す動きは、21日の判決に先立ち明らかになった、同じ地裁内の異例の決定にもみられた。確定判決をめぐり、訴訟費用を確保するために日本政府の資産を差し押さえれば「国際法に違反する恐れがある」として、日本政府に費用を負担させないことを明示した内容だった。
決定書は裁判所側が「訴訟記録の保存手続きに関する決定で、確定判決の効力には影響が及ばない」と説明する短い文書だ。しかし、外国(日本)政府の資産差し押さえを認めた判断について、「現代文明国家の威信にかかわる。強行すればわが国の司法の信頼を損なう」などと強く非難。21日の判決同様、確定判決を否定した。
決定はさらに、「国際条約を履行しないことを正当化する理由として、司法判決など国内の事情を挙げてはいけない」と強調。「司法府の判断を尊重する」との名目で、協議停滞の責任を転嫁する政府へのいらだちも浮かび上がった。(ソウル 時吉達也)