【ワシントン時事】バイデン米大統領が主催した気候変動サミット(首脳会議)が23日閉幕した。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰した米国が主導し、日本を含む先進国が温室効果ガスの新たな削減目標を相次いで表明。気候危機に立ち向かう国際協調の再始動に道筋を付けた。一方、人権や安全保障をめぐり米中の対立が深まる中、先進国と途上国の温度差も鮮明になった。

バイデン米大統領、日本の温室ガス目標「野心的」 ロシアに異例の歓迎

 「気候の危機は一国では解決できない」。バイデン氏は参加国・地域の首脳40人に結束を呼び掛け、主催国として2030年までに温室ガス排出量を05年比で半減させる新目標を示した。日本の菅義偉首相は「13年度比46%減」、カナダのトルドー首相も「05年比40~45%減」へ引き上げ。欧州連合(EU)と英国を含め、先進7カ国(G7)の目標がほぼ出そろった。

 G7以外のほとんどの国は排出削減目標を変えなかったが、積極的な発信も目立った。最大排出国である中国は国内の石炭消費量削減、インドは再生可能エネルギー拡大策、韓国は海外の石炭火力発電への支援廃止に言及した。バイデン政権がサミット前から強化策を促してきたこともあり、「一定の成果」(バイデン氏)を出した形だ。

 ただ、気候変動をめぐる外交の勢力図が一変し、「先進国対途上国」の構図が再燃する気配だ。中国の習近平国家主席は協力姿勢を示しつつ、「先進国はより大きな志と行動を示すべきだ」とけん制。自国の緩やかな排出削減目標を堅持した。ブラジルのボルソナロ大統領は「発展の権利」を主張し、米国からの厳しい要求に警戒感をあらわにした。

 今後は11月に英国で開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向け、実効性の確保が課題になる。石炭の一大生産地であるオーストラリアのモリソン首相は「重要なのはどのように(達成)するかだ」と語り、利害調整の難しさをにじませた。政権交代のたびに環境政策が二転三転してきた米国が信頼を回復できるかも、これからが正念場だ。