[東京 27日 ロイター] – 日銀の黒田東彦総裁は27日、金融政策決定会合後の記者会見で、物価目標の達成に向け、大規模な金融緩和を粘り強く続ける姿勢を強調した。最新の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、2023年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の伸び率が1.0%と、目標の2%に到達しない姿が示されたが、総裁は24年度以降に目標は達成できるとの考えを示した。ただ、民間エコノミストからはこうした日銀の物価見通しはなお高めとの指摘が出ている。 

黒田総裁は物価目標の達成に時間がかかっているのは残念だと述べる一方、「3期目」については「総裁の任命は国会の同意を得て内閣が行う。個人的な意向とは全く関係ない」とした。黒田総裁は23年4月に任期を終える。

21年度のコアCPIはプラス0.1%で、前回1月のプラス0.5%から引き下げられた。携帯電話通信料金の引き下げが下押し要因となるが、黒田総裁は消費者物価の前年比を0.5─1.0%ポイント程度下押しする見込みだと明らかにした。

2%目標は黒田総裁が就任する前の13年1月に導入した。黒田総裁は「極めて正しい決定だった」と述べ、引き下げる考えはないとした。主要国の中央銀行が2%目標を採用していることが、為替相場の安定につながっているとの見方も改めて示した。

<強気な景気見通しで物価は高めに>

23年度のコアCPIがプラス1.0%との見通しについて、一部のエコノミストからは「強気」との声が出ている。

みずほリサーチ&テクノロジーズ(R&T)の酒井才介主任エコノミストは「ゼロ%台後半の伸びも、なかなか難しいのではないか」と指摘。21年度以降、日銀の成長率見通しがかなり強気で、需給ギャップが早く改善するとみていることが日銀の物価見通しの背景にあるのではないかと話す。

日銀は21年度の実質GDP見通しを前年度比プラス4.0%と前回のプラス3.9%からわずかに引き上げたが、みずほR&Tは3%弱の成長と予想。緊急事態宣言は5月11日では終わらず、宣言解除後も消費への影響は残るとみている。

日銀は対面型サービス消費に下押し圧力が掛かる一方、感染症の影響が和らぐ中で外需の増加や政府の経済対策などで「所得から支出への前向きの循環メカニズム」(黒田総裁)も働いていくと指摘。感染症の影響で、当面は経済下振れリスクの方が大きいものの、見通し期間の中盤以降は「おおむね上下にバランスしている」とした。

大和証券の末広徹シニアエコノミストは「先行きのリスクに関する記述が上方修正されるなど、経済見通しは楽観方向に傾いた」と指摘する。追加緩和はなさそうだが、2%の物価安定目標の達成も遠く「しばらく金融政策の変更はない印象だ」と話す。