東芝が経済産業省と一体になって海外投資家に圧力をかけていたと指摘する報告書は、海外でも驚きをもって受け止められた。企業統治の根幹を揺るがす内容だけに、海外投資家の視線が一段と厳しくなるのは確実だ。専門家は「日本企業全体に関わる」と危機感をあらわにする。

 海外投資家に大きな影響力を持つ議決権行使助言会社の米ISSは14日、東芝が25日の定時株主総会に出す取締役候補13人の選任案のうち、永山治取締役会議長ら4人の再任に反対することを推奨した。

 同業の米グラスルイスも、永山氏ら5人について反対を推奨した。監査委員会や指名委員会などによる経営監視が不十分で、「投資家の利益を守るための行動ができなかった」などと理由を説明した。

 海外からの疑念の目は東芝1社にとどまらない。「『日本株式会社』の基本的な態度は、株主を保護する方向には最小限にしか変わっていないのではないか」。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はそんな論説記事を掲載した。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)も、官民が不透明な形でもたれ合って海外の影響を排除しようとした姿が、往年の「日本株式会社」を思い起こさせると論評した。

 海外からの投資を呼び込もうと、日本は2015年、企業が守るべきルールを定めたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を導入。東証1部の取引のうち海外投資家は約7割を占め、今月11日にはさらなるガバナンス強化を掲げて同指針を3年ぶりに改訂したばかりだった。

 ガバナンス改革の旗振り役の一つが経済産業省だった。企業統治に詳しい牛島信弁護士は「日本の企業統治に対し、海外投資家の信頼を決定的に失った」と指摘する。「東芝だけの問題だと思わない方がよい。経産省が自ら調査し、責任をもって説明するべきだ。それが投資家の不信感を払拭(ふっしょく)する道だ」(稲垣千駿)