[東京 24日 ロイター] – 昨年7月の東芝株主総会について、株主から選任されて調査していた外部の弁護士は24日、調査報告書の内容は一方的とする経済産業省の主張に異議を唱えた。調査報告書は、東芝と経産省が一体となり海外投資家の議決権行使に不当な圧力をかけたと結論付けている。
調査報告書は3人の弁護士が手掛け、10日に公表された。このうち和田倉門法律事務所の中村隆夫弁護士は24日、ロイターに対し、「客観的にいろいろな批判にも耐えうる形で信頼性の高いレポートを作った」と述べた。その上で、「調査報告書の信頼性が害されるような指摘については調査者として反論したい」と語った。
中村氏が指摘したのは、梶山弘志経産相が会見などで行った「一方的に断定されている」との発言。梶山氏は、米ハーバード大学の基金運用ファンドの議決権行使に影響を与えたなどと報告書で指摘された元経産省参与の水野弘道氏について、調査した弁護士と面談したにもかかわらず主張が反映されていないと批判した。ロイターも23日付の記事で、経産省幹部による同様の発言を引用した。
中村弁護士によると、面談内容を報告書に使いたい場合は記載内容をチェックすることで合意していた。同氏はM氏(報告書の中で言及されている水野氏とみられる人物)との面談後、同席していた仲介役の経産省幹部に発言の要旨をメールで送付。水野氏に転送して確認してもらいたいと依頼した。
しかし、この幹部から「面談の中でコメントを報告書に使わないでほしいとお願いしていた」、「全面的に再考してほしい」と言われ、取り次いでもらえなかった。面談の内容をそのまま報告書に記載して欲しくないとの意向が強いものと判断したという。
面談で聞き取りした発言の主旨は、M氏が公に発信している「ツイートなどを引用するなどの形でできるだけ反映させるようにした」としている。
ロイターは経産省に対し、同省幹部が水野氏に発言要旨のメモを渡さなかった理由を質問。荒井勝喜総括審議官は、「水野氏はもともと報告書に使われる前提で話をした」と説明。その上で、報告書にどう記載されるかを確認したいと伝えていたにもかかわらず、送られてきた水野氏の発言は議事録のメモだったとした。ハーバード大基金との個人的なやり取りも含まれていたという。
荒井氏は、調査者が「水野氏と約束したものは何も提示されなかった。これを水野氏に伝えてよいか確認を求めたが、その後連絡はなかった」と述べた。
中村弁護士はこれに対し、「掲載してほしくない事項や、認識に誤りがあり修正すべき点などがあれば指摘をしてほしいと伝えた」と語った。