大谷翔平が野球界に旋風を巻き起こしている。米メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスに移籍する前から、投打で活躍する「二刀流」に注目が集まっていた。
その並外れた能力が米国でも広く知られるようになった今、日本では大谷の第3の能力に着目する市場ウオッチャーがいる。株価を押し上げる力だ。
スポーツ用品メーカーのデサントやアシックスを含む大谷がスポンサー契約を結んでいる5社の株価バスケットは、大谷が歴史をつくった4月26日以降に23%上昇した。大谷は同日先発登板したが、本塁打でリーグ首位につける選手の先発登板はほぼ100年ぶりだった。大谷のスポンサー企業の株価上昇は、ブルームバーグ・ワールド・アパレル指数の上昇率(9%)の2倍以上だった。TOPIXの同期間の上昇率は1%にすぎない。
岩井コスモ証券投資調査部の有沢正一部長は大谷について、「投げて、打って、株価も上げてとなったら三刀流だ」と述べた。
自国のスポーツ選手の海外での活躍への思い入れが強い日本では、大谷の一挙手一投足が注目の的だ。今シーズンの活躍は素晴らしく、「ショータイム」を待ちわびるファンらから「一世代に一人の天才」や「ベーブ・ルースの再来」とたたえられている。
もちろん大谷効果だけではないが、6月だけでも60%余り値上がりしたデサントなどスポンサー企業の株価上昇に、大谷の活躍は寄与していると言えるだろう。
ウォーレン・バフェット氏が投資する伊藤忠商事傘下のデサントは、大谷が北海道日本ハムファイターズでプロデビューした翌年の2014年から、トレーニングウエアを供給する契約を結んでいる。
有沢氏は「デサントにはちょっと大谷効果が出ているという気がする。株価の動きを見ていると、(上昇が)活躍し始めた時と重なっている」と話した。大谷の活躍で投資家が消費の回復を織り込み始めた面もあると付け加えた。
スポーツ用品メーカーの株価上昇の背景には、業界を先導する米ナイキの好業績もある。同社株が上場来高値を更新したことは、新型コロナウイルスの感染拡大が世界の多くの場所で収まるに伴い消費が予想以上のペースで回復していることを示した。
大きな大会で優勝し海外での知名度を高めている日本のスポーツスターも増えている。テニスの大坂なおみやゴルフの松山英樹だ。さらに東京五輪もある。開催への批判もあり海外からの観客は受け入れられないが、それでも何十億もの人が競技を視聴するだろう。
デサントについては、大谷と東京五輪に加え、2022年2月に北京で開催される冬季五輪の効果も、アシンメトリック・アドバイザーズのティム・モース氏は指摘している。
原題:Pitches, Hits and Lifts Stocks: ShoTime Boosts Sportswear Names(抜粋)