- ラガルド総裁がベネチアでのG20会議後にブルームバーグTVに語る
- 緊急刺激策は来年3月後に「新たなフォーマット」に移行も
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は11日、金融刺激策の新しいガイダンスが約10日後に提示されるのに備えるよう投資家に呼び掛け、既存の緊急債券購入プログラムが終了した後に経済を支える新たな措置が来年導入される可能性を示唆した。
ラガルド総裁はベネチアでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後にブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、22日に開く政策会合では「興味深い変化や変更が幾つかあるだろう」と予告した。
ECBは6、7両日の特別会合でインフレ目標を2%に引き上げ、必要ならオーバーシュートの余地を容認することで合意。22日の会合は比較的平穏なイベントとなるとこれまでは考えられていたが、ラガルド総裁は「重要な会合になる」と説明。「われわれのコミットメントを粘り強く示す必要性を踏まえると、フォワードガイダンスが再検討されることは確実だ」と語った。
ECBのラガルド総裁がブルームバーグテレビジョンとのインタビューで語る
ECBが先週、戦略点検を予想外に早めに終了したことで、新型コロナウイルス禍からユーロ圏経済が回復し始める中でのECBの計画について思惑を呼んでいる。
ECBがインフレ目標引き上げ、オーバーシュート容認-戦略点検
ラガルド総裁は現在の1兆8500億ユーロ(約242兆円)規模のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)について、「少なくとも」2022年3月まで続くことを見込んでいると述べた。その後に「新たなフォーマットへの移行」が行われるかもしれないと説明した。詳細は明らかにしなかった。
ただ同総裁は、コロナのデルタ変異株が平常の生活を取り戻す取り組みへの脅威となり得るため、回復についてはまだ「慎重ながらも楽観」している程度だと指摘。緊急刺激策の縮小時期について協議する必要性を否定した。年内に物価上昇に弾みが付く見込みだが、ECBはこれが一時的にとどまると予想している。
ラガルド氏は「われわれは極めて柔軟になり、向こう数週間ないし数カ月以内に出口を見込めるといった期待感を生まないようにする必要がある」と語った。
米当局と違い鮮明、ECB平均インフレ目標とせず-2%上振れ容認も
ラガルド総裁は、ECBのガイダンスのうち、「2%を下回るがそれに近い水準」としていた変更前のインフレ目標と関連付けられていた将来の金利や資産購入に関わる部分を見直すことが当面の課題だと説明した。
同総裁は「われわれは状況を検証し、どのフォワードガイダンスの見直しが必要か検討することになる。われわれの新たな戦略と合致するよう、活用している全ての手段について精度を調べることになる」と述べた。
ラガルド氏はさらに、新たなインフレ目標の達成には「もう少し時間を要するかもしれない」と認めながらも、より重要なことは、物価安定回復へのコミットメントの一環として過渡的で緩やかなオーバーシュートは必要な可能性があると「受け入れて容認する」ことだと指摘。「2%目標の達成には手段を活用する必要があり、われわれには多くの手段がある」と説明した。
一方、ラガルド総裁は、来週の政策会合で中銀のデジタル通貨について「試験的な段階」への移行で合意する公算が大きいと語った。これはデジタル通貨採用の是非を判断するのはまだ数年先であることを意味する。
気候変動への取り組みでは各国政府にカーボンプライシングの統一で合意するよう呼び掛け、グリーンボンドがさらに発行されればECBはそれを購入する意向だとした。
原題:ECB’s Lagarde Sees Policy Change in July, Possible 2022 Measures