【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)欧州委員会が14日、2035年に域内でのガソリン車など内燃エンジン乗用車の新車販売を実質的に禁じる方針を打ち出した。50年の温室効果ガス排出「実質ゼロ」実現に向け、電気自動車(EV)シフトを加速させる。ハイブリッド車(HV)も禁止対象となり、HVを得意とする日本メーカーは欧州戦略の見直しを迫られそうだ。
欧州委は「HVは(EVへの)移行で重要な役割を担うが、消える宿命だ」(高官)との立場。一方、日本政府も30年代半ばまでに「電動車100%」を目指すが、これにはHVも含まれている。
欧州委が大胆なEVシフトを図る背景には、欧州各国やメーカーが既に電化にかじを切り始めた現状がある。ノルウェーは25年に内燃エンジン車販売を禁止。英国やオランダ、フランスなどもそれぞれ、30~40年に禁じることを計画している。
こうした流れを受け、欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲンは先月、35年までに欧州で内燃エンジン車販売をやめると表明した。欧米大手ステランティスも25年までに300億ユーロ(約4兆円)をEVに投じる意向だ。
ただ、欧州メーカーの間でも独BMWや仏ルノーは急速なEVシフトに警戒感を示すなど、業界内に温度差がうかがえる。欧州自動車工業会(ACEA)は14日の声明で「特定技術を禁じるのは合理的ではない」と、懸念をあらわにした。
EU中核国の独仏は、自動車産業が多くの雇用を抱える事情から欧州委の提案には慎重姿勢とみられるなど、EUも一枚岩ではない。最終決定には加盟国と欧州議会の承認が必要で、協議の難航は必至だ。