- 米英などの制限緩和は時期尚早、より強力な措置求める-元衛生相
- 中国はコロナ封じ込め戦略を転換せざるを得なくなると専門家
世界では多くの国が新型コロナウイルスとの共生に軸足を移しつつあるが、中国はコロナを一切容認しない政策を堅持しており、世界2位の経済大国が今後何年も孤立しかねないリスクが生じている。
厳しい国境封鎖を敷く中国だが今月に入り30を超える第1級行政区(省・直轄市・自治区)の半数余りで感染力の強いデルタ変異株が確認され、対象を絞ったロックダウン(都市封鎖)や移動制限、集団検査など新たな一連の対策実施を余儀なくされた。
湖北省武漢市で昨年大流行して以来、中国内で最も広範な感染拡大となっているが、世界保健機関(WHO)によれば、6日の新規感染者数は中国では141人と米感染者数の0.01%程度にすぎない。
感染者数が比較的少ない中での積極的な感染抑制策に加え、世界最高レベルのワクチン接種率は、中国共産党がコロナ撲滅に向けどれだけ大掛かりな政治的投資を行っているかを物語っている。
中国指導部は短期的には少なくとも来年いっぱい厳しい制限を維持する意向で、北京で開催される冬季五輪のスケジュールを狂わせたり、5年に1度の共産党大会での習近平総書記(国家主席)の3期目就任に影を落としたりするような感染急拡大は望んでいない。
だが、問題はある。特にコロナ対策を容易にかいくぐる新たな変異種の発生は、こうした政策を無期限に維持するための経済および政治的コストが膨らませる。
英オックスフォード大学の陳錚鳴教授(疫学)は「中国は遅かれ早かれ、コロナ封じ込め戦略を転換せざるを得なくなるだろう。コロナ撲滅は一時的には可能だが、永久には無理だ。ウイルスは気付かないうちに襲ってくるためだ」と述べた。
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現在、中国では別のアプローチを提案することすらタブーに近い。共産党機関紙・人民日報系の医療ニュースアプリが週末に掲載した論説で、高強・元衛生相は米英などの国々に対し制限緩和は時期尚早と非難する一方で、ウイルスを中国から閉め出すさらに強力な措置を求めた。
高氏は「ワクチン接種だけに依存し、いわゆる『コロナとの共存』を追求したことが感染再拡大をもたらした」と主張した。
投資への影響
コロナ一掃に向けた中国の取り組みは、投資家にも影響を及ぼしている。しかも多くの投資家は、テクノロジー企業に対する政府の徹底的な締め付けで中国株から一時1兆5000億ドル(約165兆円)の価値が吹き飛んだことで、既に打撃を受けている。
インフレ圧力が高まる一方で成長は鈍化する見込みで、年後半の経済リスクは積み上がりつつある。ゴールドマン・サックス・グループと野村ホールディングスは今月、中国政府のコロナ対策を理由に中国の成長見通しを引き下げた。
ピンポイント・アセット・マネジメントの張智威チーフエコノミストは8日のリポートで、中国のコロナ政策は国内の比較的安全な状況につながるとしながらも、「そのコストは中国の孤立が続くことだ」と指摘。「コロナ拡散を一切容認しない政策は経済成長にとって高くつく。高氏の論説は、中国が代償を支払うこともいとわないことを示している」と論じた。
原題:China’s Covid-Zero Strategy Risks Leaving It Isolated for Years(抜粋)