[東京/香港 25日 ロイター] – 統治問題に揺れる東芝が、企業価値向上に向けた戦略について米KKRや米ベインキャピタルなど複数のプライベートエクイティ(PE)ファンドと意見を交わしていることが分かった。事情を知る複数の関係者が明らかにした。

東芝は10月に新たな中計経営計画を発表する予定で、6月に戦略委員会を立ち上げて事業構成の見直しを始めた。ファンド勢との協議はそのための一環。同委員会は米ブラックストーンやカナダのブルックフィールドなど少なくともPEファンド4社と対話をしている。

対話は初期段階で、非上場化や事業売却などについて具体的な案を求めているわけではないという。正式な提案につながるかどうかも不明。しかし、東芝の事業を買収したり、非公開化を提案する可能性がある投資ファンドと話し合いを進めていることが明らかになった形だ。

一方、状況を見守る投資家の一部からは、PEファンドと対話しているにもかかわらず、具体的な提案を募る手続きが始まらないことに当惑する声が上がっている。

東芝はロイターの問い合わせに対し、「公表しているとおり、当社戦略委員会は当社の企業価値向上に向けて、戦略投資家や金融投資家との対話を含め、あらゆる施策の検討・議論を遅滞なく進めている」と回答。「当社は、検討・議論の結果は10月に予定している新事業計画において公表予定であり、現時点のコメントは差し控える」とした。

東芝を巡っては、4月に英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが買収・株式非公開化を提案。社内外で波紋を呼び、その過程で車谷暢昭最高経営責任者(CEO)が辞任した。詳細について記載がなく、評価不可能として東芝が交渉を事実上打ち切きると、一部の株主から反発が起きた。

綱川智社長兼CEOは今月12日の決算会見で、非上場化の可能性について、「具体的で真摯な、実現可能性ある提案が来たら、取締役会で検討する」と従来からの方針を改めて説明。現時点で「具体的な提案を受け取っているものはない」としていた。

東芝は新たな中計を策定すると5月に発表した際、脱炭素や地球温暖化対策に関連した事業を柱と位置づけ、事業を再編する考えを明らかにしていた。

(山崎牧子、Scott Murdoch 編集:久保信博)