[13日 ロイター] – 米自動車大手、ゼネラル・モーターズ(GM)と韓国の複合企業LGは長年にわたり、手を携えて電気自動車(EV)の開発に取り組んできた。しかし、GMのEV「シボレー・ボルト」に搭載したLG傘下企業のバッテリーで発火事故が立て続けに発生し、GMが大規模なリコール(無償の回収・修理)を余儀なくされたことで、両社の「蜜月」は大きく揺らいでいる。
GMのポール・ジェイコブソン最高財務責任者(CFO)は10日の投資家向け説明会で、LGのバッテリー工場の製造工程における問題を解決し、GMの品質基準を部分的に導入すべく、GMの技術者がLGに協力していると明かした。
GMはLG傘下のバッテリー大手、LGエネルギーソリューション(LGES)の韓国と米ミシガン州にある工場が、ボルトの連続バッテリー発火事故の原因になっていると特定した。GMは一連の事故をきっかけに3件のリコールを実施し、関連費用は18億ドルに上る。機器の修理はまだ、行われていない。
LGESと同社の関連会社LG電子は10日、GMとの「密接な関係」を強調。ボルトのバッテリー不具合の問題解決に向けて最終的なリコール計画を策定すべく積極的に協力していると説明した。ボルトは2016年末以来の製造台数の累計が、14万台余りに達している。
GMの広報担当は9日に「GMとLGの専門家は、この問題に24時間体制で当たっている」と述べ、LGが正常なバッテリーを供給できると確信でき次第、できるだけ速く修理を開始すると説明した。
GMによると、初期モデルのボルトはバッテリーパックを全て交換し、後期モデルは不具合のあるモジュールのみを交換する。ただ、新たな部品が手に入るのは、今年11月以降になるかもしれない。
<浮上する負担増のリスク>
一方、ソーシャルメディア上ではボルトのオーナーやEVの購入を検討している顧客がGMとLGに不満や懸念をぶつけており、両社がバッテリー発火事故で、どれほどのダメージを受けるのか見通しが立たない状態だ。
調査会社のJDパワーのタイソン・ジョミニー副社長は「米EV大手・テスラですら、発火事故で影響を受けたことはない。EV移行の流れが鈍ることはないだろう」と話す。
ただ、事情に詳しい関係者によると、GMとLGは高額なリコール問題が宙に浮いたままで、関係が悪化している。両社の関係は「仮面夫婦」(韓国人アナリスト)と呼ばれる状態に陥っており、すぐに代わりの相手が見つからないので、離婚せずにいるだけの状態だ。
ボルトを製造するGMのミシガン工場は操業を停止し、従業員1000人が9月末まで自宅待機となっている。
GMのジェイコブソンCFOは10日、18億ドルのリコール費用について、LGとの間で「ハイレベルの協議」を行っており、LGが負担してくれることを期待していると述べた。
だが、GMとLGが負担するコストは、最終的にもっと膨らむ恐れがある。
GMは350億ドルを投じて、独自のパウチ型リチウムイオンバッテリー、アルティウムを搭載した次世代EVや自動運転車の立ち上げを進めている。アルティウムはオハイオ州とテネシー州にあるLGESとの合弁工場で生産し、「GMCハマーEV」などのモデルに採用する計画だ。
しかし、8月下旬のボルトでのリコール発生を受けて、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は、今後のバッテリー工場について新たなパートナーを模索する可能性に含みを残した。
GMのアルティウムバッテリーは、ボルトに搭載されているLG製とは設計やサイズ、化学的組成が異なる。また、GMの幹部によると、アルティウムバッテリーの製造と品質管理は、LGではなくGMが担うという。
LGとその関連会社は、GMと同様に大きな問題を抱えている。
LG製バッテリーに関連してリコールが発生したのは、ボルトだけではない。韓国の現代自動車は今年初め、中国で製造されたLG製バッテリーが原因となって発火事故が起きたことから、全世界で「コナEV」約7万6000台をリコールした。
テスラのイーロン・マスクCEOは最近のツイッターへの投稿で、GMとLGのパウチセル技術について「大型のパウチセルは熱暴走が発生する可能性が、危険なほど高い」と指摘した。
LGESは45億ドルを投じて米国に2カ所のバッテリー工場を建設する計画だが、生産するセルの種類は明らかになっていない。セルの生産体制変更により、投資計画に遅れが生じる可能性もある。
(Paul Lienert記者、Heekyong Yang記者)