QINGDAO, CHINA – FEBRUARY 10: Employees patrol a tank at a liquefied natural gas (LNG) terminal operated by China Petrochemical Corporation (Sinopec Group) in a foggy morning on February 10, 2021 in Qingdao, Shandong Province of China. (Photo by VCG/VCG via Getty Images)

世界は今、クリーンエネルギーへの移行期における最初の大きなエネルギー危機に直面している。そして、こうした危機は今後も繰り返されるとみられる。

  英国から中国まで、天然ガスや電力の不足は新型コロナウイルス禍で急減した需要が戻ってきた時期に重なっている。これまでも世界は不安定なエネルギー市場や供給逼迫(ひっぱく)に直面してきた。しかし、現在の状況がそれと異なるのは、先進国では電気時代の幕開け以来で最も野心的な電力システムの改革が進んでいる一方で、再生可能エネルギーの貯蔵が容易ではないことが背景にある。

  エネルギー改革の実現には数十年かかるとみられ、その間、世界は引き続き化石燃料への依存が続くことになりそうだ。

  エネルギー問題の世界的権威であるダニエル・ヤーギン氏は現在の状況について、「エネルギー転換がいかに複雑なものになるかとの警告だ」と述べた。抜本的な変化が進む中、世界のエネルギーシステムは著しく脆弱(ぜいじゃく)になり、ショックを受けやすくなっている。  

欧州の不吉な前兆

  欧州では冬が例年より寒く天然ガスの在庫が枯渇した後に経済再開によって需要が急増し、ガスと電気の価格が高騰した。新型コロナ禍が20年前に起きていたとしても、似たような状況には陥っていただろう。

  しかし現在、英国と欧州は以前とは大きく異なるエネルギー源の組み合わせに依存している。石炭の利用は大幅に減り、多くの場合、よりクリーンな燃料であるガスに取って代わった。ただ今年は世界的にガス需要が急増し、供給が足りなくなっている。

  欧州が直面している痛みは、世界の多くの地域に広がる懸念がある。太陽光発電や風力発電が普及して価格が安くなっても、世界の多くの地域では天然ガスなど化石燃料への予備的な依存が向こう数十年は続くとみられるからだ。その一方で、投資家や企業の間では化石燃料の生産を増やすことへの関心は薄れつつある。

風力発電などが増えた欧州でも化石燃料への予備的依存は続いている写真家:Bartek Sadowski / Bloomberg

増え続ける電力需要

  ブルームバーグNEFによると、2050年までに世界の電力消費量は60%増加するとみられる。その背景には、化石燃料の使用が段階的に減らされ、自動車や暖房システムなどが電動に切り替えられることがある。経済成長と人口増加も電力消費を押し上げるだろう。半面、デジタル化がさらに進み、安定した電力の必要性はこれまで以上に高まることになる。

  電力需要の急増と燃料価格の乱高下が相まって、世界は向こう数十年、不安定なエネルギー環境に置かれるかもしれない。その結果、エネルギー価格上昇によるインフレ、所得格差の拡大、停電の脅威、経済成長の阻害という状況がもたらされる恐れがある。

期待される解決策

  今後の最大の課題の1つは、風力や水力によって生み出した電力をどう蓄えるかだ。解決策は存在するものの、必要とされる規模に達するには何年もかかるとみられる。

  多くの国や企業は、エネルギーの貯蔵方法の1つとして、また輸送や工業に使う燃料として水素に期待を寄せている。

カリフォルニア州にあるエネルギー貯蔵施設写真家:Bing Guan / Bloomberg

  水素は、再生可能エネルギーを使った電解装置で水を電気分解することで得られる。その過程で温室効果ガスは発生しない。こうして作り出した水素はタービンで燃焼させたり、燃料電池として発電に使うこともできる。石油やガス、石炭とは異なり、こうした「グリーン水素」は水と強い太陽光と風さえあれば、世界のどこでも生産可能だ。

  ただ、初期のグリーン水素プラントもまだ計画段階にあり、重工業や電力会社など潜在的な大手需要家は、この解決策が有効かどうかをなお検討している。水素が世界のエネルギーシステムを支えるようになるとしても、それは何年も先の未来だろう。

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原題:Global Energy Crisis Shows Fragility of Clean-Power Era(抜粋)