[4日 ロイター] – ダイヤモンド、サングラス、高級スポーツウエアにコンクリート。どれも気候変動問題に関連しているという。なぜなのか。
実は、これらの製品はすべて温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を使って作ることができる。そしてCO2の再利用という潮流の変化を支える技術系スタートアップ企業が投資家の注目を集めている。
使われるのはバクテリアやタンパク質で、化学的に反応を加速させる方法もある。ほとんどの企業はCO2を炭素と酸素に分解し、消費財に使われる別の化学物質を作り出している。
ロイターがピッチブック、サーキュラー・カーボン・ネットワーク、クリーンテック・グループ、クライメート・テックVCのデータをもとに推計したところによると、この分野の企業の資金調達は年初来で8億ドル強と、既に昨年全体の3倍以上に膨らんでいる。
回収したCO2からダイヤモンドを生み出す技術を研究しているイーサー・ダイヤモンズのライアン・シェアマン最高経営責任者(CEO)は、「環境税とは言いたくないが、本当に関心を抱いているわれわれの顧客は、多少価格が高くても買うつもりだということが分かった」と話した。
カーボンキュア・テクノロジーズのロバート・ニーヴンCEOに聞くと、人を魅惑するという点でダイヤモンドの対極に位置するコンクリートも、やはり脱CO2がマーケティングにとって有効だ。同社は生コンクリートにCO2を注入し、強度を高める技術を開発した。
同社の技術導入先の90%は、競争力の強化を目指す大小の独立系コンクリート製造会社だという。
国連の推計では、気候変動を抑制するには、今世紀半ばまでに世界で年間100億トンのCO2を回収・貯蔵する必要がある。今のところCO2回収は試験的に実施されているだけで、規模は数百トンから数千トン。年100億トンなど夢のようだ。
人類が生み出す温室効果ガスはCO2換算で年間約500億トンに上る。
コロンビア大学が5月に発表したレポートに基づけば、CO2の再利用が可能な化石資源由来の製品の排出量は約68億トン相当。しかしリポート執筆者の1人であるアマー・バールダワジ氏の話では、CO2排出量を削減する、よりコストの低い方法があるため、化石資源由来の製品のCO2を全て再利用CO2に置き換えようとするのは「CO2再利用の誤用」だという。
化学反応を利用してCO2を再利用する技術を開発したトゥエルブのニコラス・フランダース共同創設者は、CO2を回収して地下に貯蔵するよりも再利用する方が有効だと話す。「開発しているのは、化石燃料と互角に渡り合える技術」であり、CO2排出量を減らすために経済的なインセンティブを加える必要はないという。
これは消費者の多くが「グリーン(脱CO2)」という表示に引き付けられるからだ。
スポーツ衣料大手ルルレモン・アスレティカは、微生物の発酵による化学合成技術を持つランザテックと組んで、CO2からポリエステル糸を製造すると発表した。今後はこの糸を製品に使う予定だ。
ロイターが調べたところ、ランザテックはこの分野で資金調達額が最も大きい。同社の技術はバクテリアによってエタノールを作り出す。エタノールはエチレンに変化させることが可能で、エチレンはペットボトルからポリエステルまであらゆるものの製造に使われる。
ジェニファー・ホルムグレンCEOは、ランザテックのエタノールはトウモロコを原料とするエタノールよりも価格は高いが、より環境に優しい製品を求める顧客が購入していると説明した。
この分野では、ヒューストンに拠点を置くソルゲンに3億5000万ドル以上が振り向けられたのが今年最大の投資案件。同社はCO2などを酵素に還元し、強化セメントや水道管のコーティングなどに使われる化学物質を製造する。
ガウラブ・チャクラバーティCEOによると、同社の製品は既に化石資源由来の製品よりも安価だ。工場から排出されるCO2や大気中のCO2の回収はしていないが、「選択肢の1つ」だという。
多くの投資家はCO2回収業には明るい展望を持っていない。こうしたプロジェクトは巨額の費用がかかり、リスクも大きいため、政府が資金を出すべきだとの考えだ。
しかしピュア・エナジー・パートナーズのマネージングパートナー、ニコラス・ムーア・アイゼンバーガー氏は、空気中のCO2を直接回収するグローバル・サーモスタットに投資している。投資の機会は確実で、プロジェクトの規模が大きくなればコストは下がると見ている。
「科学は、気候変動を食い止めるには10年以内に取り組みを始める必要があると教えている。ほとんどのベンチャー投資家やプライベートエクイティ(PE)投資家にとって、これは投資の時間軸にすっぽり収まる」と力説した。
(Jane Lanhee Lee記者、Nia Williams記者)