衆議院の解散を受けて、岸田総理大臣は14日夜、記者会見し、今回の衆議院選挙は「未来選択選挙」だとして、「コロナ後の新しい未来を切りひらいていけるのは誰なのか選択いただきたい」と支持を呼びかけました。

新型コロナ対策の全体像の骨格 あす示す

冒頭、岸田総理大臣は「衆議院の解散・総選挙を経て、一刻も早く、衆議院の構成を確定し、主要政策の具体化に向けた作業を加速するとともに、新型コロナ対策や経済対策を講じていかなければならない」と述べました。

そして、新型コロナ対策の全体像の骨格をあす示すと明らかにしたうえで、ことし夏の2倍程度の感染力にも対応可能な医療体制の整備に向け、公的病院の専用病床化を進めるとともに、感染拡大時の病床稼働率について8割を超える水準まで引き上げる考えを示しました。

衆院選後 速やかに総合的かつ大胆な経済対策を

さらに3回目のワクチン接種を12月に開始し、治験が行われている軽症者向けの飲み薬の年内の実用化を目指す考えを強調しました。

そして衆議院選挙のあと、速やかに総合的かつ大胆な経済対策を取りまとめるとして、非正規労働者や子育て世帯などにいわゆるプッシュ型の給付を行い、感染拡大の影響を受けた事業者に対しては、地域や業種を問わず、去年の持続化給付金並みの給付を事業規模に応じて行うほか、雇用調整助成金の特例措置を来年3月まで延長する方針を示しました。

「Go Toトラベル」見直し 再開へ準備整える

さらに「Go Toトラベル」などの消費喚起策については、ワクチン接種証明と検査の陰性証明を活用し、より安全・安心を確保した制度に見直したうえで再開に向けた準備を整える考えを示しました。

そして岸田総理大臣は「衆議院選挙で国民の皆さんの信任をいただければ数十兆円規模の総合的かつ大胆な経済対策を最優先でお届けする」と強調しました。

また今回の選挙を「未来選択選挙」と位置づけ「新型コロナ対策と経済対策に万全を期したうえで、コロナ後の新しい経済社会を創りあげなければならない。コロナ後の新しい未来を切りひらいていけるのは誰なのか国民に選択いただきたい」と述べ、今月31日に投開票が行われる衆議院選挙に向け、支持を呼びかけました。

行革推進へ「デジタル臨時行政調査会」発足の考え

さらに岸田総理大臣は「『成長も分配も』実現を目指す。野党の言うように分配だけでは成長できなくなる」と指摘し、みずからが議長となる「新しい資本主義実現会議」を創設するとともに、デジタル改革や規制改革、それに行政改革を一体的に進めるための「デジタル臨時行政調査会」を立ち上げる考えを示しました。

台湾 TSMCへの支援を経済対策に盛り込む考え

さらに、半導体の受託生産で世界最大手の台湾のTSMCが日本に半導体の新しい工場を建設する方針を明らかにしたことに関連し「日本の半導体産業の不可欠性と自律性が向上し、経済安全保障に大きく寄与することが期待される」と述べ、TSMCへの支援を経済対策に盛り込む考えを示しました。

賃上げ促進税制の強化 政府・与党に指示

分配政策について、岸田総理大臣は「分配を、市場にすべて任せるのではなく、国が丸抱えするのでもなく、民と官が、それぞれの役割を果たすことで国民を豊かにしていく。雇用を増やすことに加え、一人ひとりの給与を増やしていく」と述べ、賃上げ促進税制の強化を政府・与党に指示したことを明らかにしました。

そのうえで「従業員一人ひとりの給与を引き上げた企業を税制で支援し、控除額の上限についても大胆に引き上げる」と述べ、産業界に対しては、みずからが先頭に立って、給与の引き上げを求めていく考えを示しました。

また、看護や介護、保育などの現場で働く人の収入を引き上げるための議論を進め、年末までに具体的な結論を出す考えを示しました。

国家安全保障戦略・防衛大綱・中期防衛力整備計画の改定を指示

一方、外交・安全保障に関連して、厳しい安全保障環境に対応するため、国家安全保障戦略や防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定を指示し、関係閣僚間で議論を始めたことを明らかにしたうえで「基本的な憲法観、日米安保や自衛隊の役割といった、基本的な安全保障観でさえ、方向性が一致していない野党各党に、この国を委ねることはできない」と述べました。

そして、岸田総理大臣は「私の想い、私が提示してきた政策に1点のブレも後退もない。大切なことは優先順位をしっかりつけ、一つ一つ着実に実施していくことだ」と強調しました。

衆議院選挙の勝敗ライン「与党で過半数を確保」

一方、岸田総理大臣は、衆議院選挙では、自民・公明両党で過半数の獲得が勝敗ラインになるという認識を重ねて示しました。

さらに、記者団から「憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を与党で確保することを目指さないのか」と問われたのに対し「憲法改正もしっかり訴えたいがそれだけを争点に選挙をやるわけではない。選挙プラスその後の議論の中でより多くの方々に理解を得て、結果として3分の2を得て発議し、国民の2分の1の賛成を得て、改正につなげていく」と述べました。

温室効果ガスの削減目標「しっかりと堅持」

気候変動問題をめぐり、菅政権が掲げた温室効果ガスの削減目標を堅持するのか質問されたのに対し「2030年に向けた温室効果ガスの削減目標を2013年度に比べてマイナス46%とし、さらには2050年のカーボンニュートラルを実現する目標はしっかりと堅持する。目標を堅持したうえで、さまざまな環境対策やエネルギー問題にしっかり取り組み、それを基本にしながら現実的な対応を考える」と述べました。

経済政策「分配のみは行き詰まる」

経済政策をめぐり「『成長と分配の好循環』と申し上げているが『分配』が野党と一緒ではないかといった指摘がある。しかし、分配のみを言って成長を考えなければ、分配する成長の果実がなく行き詰まってしまう」と指摘しました。

そのうえで「成長について努力をして、力を入れてきた自民党が『しっかり分配をする』と言う意味は、国民にしっかりご理解いただきたい。官と民が協働する形で結果を出そうというのが、従来の経済対策とは違うと説明させていただきものごとを動かしていく」と述べました。

衆院解散の時期「議員任期の空白はできるだけ小さく」

記者団が「野党側が求めた予算委員会を開催せず解散に踏み切ったが有権者は十分な判断材料を得られたのか」と質問したのに対し「衆議院議員の任期は10月21日までで、空白はできるだけ小さくしなければいけない。現実的な要請とできるだけ国民に丁寧に説明することとのバランスの中で考え、所信表明演説と代表質問を通じて、できるだけ考え方や内閣の方針について説明したうえで、選挙をお願いさせていただいた」と述べました。

衆院選「コロナ対策が大きな争点に」

衆議院選挙の争点について「国民の最も大きな関心事はコロナ対策だ。現状にどう対応するのかや、コロナとのたたかいや危機的な状況を乗り越えた先にどんな社会を見ていくのかが、まず大きな争点になる。また、国際社会がいま大きく激動しており、国際社会の中でどう日本が生きていくのか、そして国際社会における日本を誰に委ねるのかも大きな争点になるのではないか」と述べました。

子どもをめぐる問題「寄り添える相談体制を作る」

自殺や不登校、児童虐待など子どもをめぐる問題について「何と言っても人と人とのつながりや絆の部分に大きく影響される課題ではないか。当事者が自分で抱え込んでしまう状況に対してしっかり政治として何か用意しなければいけない。いちばんストレートなのは相談体制で、困った時に自分で抱え込むことなく、寄り添うことができる体制を作っていく」と述べました。

成長の果実「軽々しく『何年後』と言うことは無責任」

「成長の果実が国民に行き渡るのは、いつなのか」と問われたのに対し「今、コロナとの闘いの渦中にある。できるだけ早く、この闘いに勝利し、平時に近い生活を取り戻し、その後、経済を回し始めることを考えていかなければならない。コロナの経済に対する影響によって、立ち直りも変わってくるわけで『何年後に結果が出るという答えがほしい』という思いはわかるが、軽々しく『何年後』と言うことは、かえって無責任になりかねない」と述べました。

エネルギー政策「原子力も1つ選択肢として用意しておくべき」

エネルギー政策について「再生可能エネルギー1本足打法では、電力の安定供給や価格の問題に十分対応できない。水素などさまざまなエネルギー源の中に原子力も1つ選択肢として用意しておくべきだ」と述べました。

また、テロ対策上の重大な不備が相次いだ東京電力柏崎刈羽原子力発電所について「まず東京電力が再発防止策を徹底的に遂行し、地元の皆さんに十分理解されるものかどうかしっかり問われなければならない。エネルギー政策の中で、1つひとつの原発の在り方について、丁寧に対応していく努力が大事だ」と述べました。

東日本大震災の被災地 今週末に視察へ

東日本大震災の被災地の復興状況を視察するため、今週末に、就任後初めて、岩手、宮城、福島の3県を訪れ、関係者と意見交換することを明らかにしました。

改憲問題「選挙後の議論も大事 道筋を確保したい」

記者団から「憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を与党で確保することを目指さないのか」と問われたのに対し「憲法改正もしっかり訴えたいが、それだけを争点に選挙をやるわけではないので、選挙だけで3分の2の議席を確保するという考え方には無理があるのではないか。選挙プラスその後の議論の中でより多くの方々に理解を得て、結果として3分の2を得て発議し、国民の2分の1の賛成を得て、改正につなげていく。選挙後の議論も大事にして道筋をしっかり確保していきたい」と述べました。