英スコットランド・グラスゴーで31日、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が始まった。一方、イタリア・ローマで開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は同日、最終日を迎え、気候変動を食い止めるため「意味のある効果的な行動」を約束したものの、具体的な方策は明示しなかった。
COP26には、2030年までにCO2排出量をどのように削減して地球を救うのか、その方針を提示するために約200の国と地域の代表が集まった。
人間が使用する化石燃料による温室効果ガスが原因で温暖化が進む中、科学者たちは気候の大惨事を避けるために緊急の行動が必要だと警告している。 開会式でアロク・シャーマCOP26議長は、「私たちが共有する惑星は、悪い方向へ向かって変化している。これは誰もが承知していることで、対策をとるには誰もが一致しなくてはならない」と述べた。
COP26はもともと昨年開催の予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期された。
「(延期された)この1年間、気候変動は休んでいたわけではない」とシャーマ議長は述べ、「必要な対策をただちに編み出さなくてはならない。そのための作業は今日始まる。成功するも失敗するも、私たちは全員一緒だ」と、国際社会の共同歩調の必要性を訴えた。
英与党・保守党の下院議員で前ビジネス相のシャーマ議長は、気候変動対策の国際的な枠組みを定めた2015年のパリ協定に触れ、当時設けた気温上昇抑制やそのための温室効果ガス排出削減の目標を実現するには、今回のCOP26が「最後の、そして最善の希望だ」と強調した。
「パリが約束したことを、グラスゴーは実現する」とシャーマ氏は述べ、「急速に変化する気候は世界への警鐘を鳴らしている」と警告した。
その上で議長は、「私たちは交渉を前進させ、かつてないほど野心的で行動を伴う10年間を開始させられるはずだ」と、COP26の進展に期待を示した。
COP26開幕に先立ちイギリスのボリス・ジョンソン首相は、COP26が「世界の真実の瞬間」になると述べた。 ジョンソン首相は2週間にわたる気候変動会議を前に、各国首脳にこの会議の場を最大限生かすよう求めた。「我々がこの瞬間をものにするのか、それともつかみ損ねてしまうのかという疑問を、誰もが投げかけている」。
COP26開幕前にシャーマ議長はBBCに対して、COP26での合意について、5年前に世界のほぼすべての国が地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるために「努力を追及する」ことで合意した「パリ協定よりも厳しい内容になる」だろうと話した。
シャーマ議長は、「これは各国のリーダーたちにかかっている」と、BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」で述べた。「この目標をどうやって達成するのかについて、リーダーたちが前向きに取り組み、全員で合意する必要がある」。
地球の気温は産業革命以前と比べて少なくとも摂氏1.1度上昇している。気候の専門家たちは、気候の大惨事を防ぐために気温上昇を1.5度に抑えたいとしている。
世界各国は2015年のパリ協定で、地球の気温上昇を産業革命前の水準と比較して2度上昇より「かなり低く」抑えるための対策を講じることで合意した。しかしその後、異常気象が深刻化したことから、気象科学者たちは環境災害のリスクを抑えるために気温上昇を1.5度以内にとどめるよう各国に呼び掛けている。
■G20の気候対策は
COP26に先駆けてイタリア・ローマで開かれていた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は同日、気候変動を食い止めるため「意味のある効果的な行動」を約束したものの、具体的な方策は明示しなかった。
G20を構成する19カ国と欧州連合(EU)によるCO2排出量は、世界全体の80%を占める。このG20による共同声明は、年末までに石炭火力発電所の新設への出資を停止すると約束した。これは石炭火力の依存度が高い中国、ロシア、インドなどへの強いメッセージとなる。ただしG20は、自国での石炭火力発電の廃止については合意に至らなかった。
さらに、気候対策としてすでに多くの国が2050年までのネットゼロ(温室効果ガスの排出実質ゼロ)達成を約束しているのに対し、G20はこれに言及しなかった。
G20サミットでは同日、イギリス王室のチャールズ皇太子が気候変動対策について演説し、「人類のために」行動を起こすよう各国首脳に呼びかけた。ただ、新たなインフラ整備にかかる費用は「数兆ドル」に上る可能性があり、政府と民間部門が連携して取り組む必要があると認めた。
G20議長国イタリアのマリオ・ドラギ首相は、長期的な目標を掲げつつ、段階的な石炭の使用停止と再生可能エネルギーへの投資を加速させるよう同僚たちに呼びかけた。
今回のG20サミットは新型ウイルスの影響で2年ぶりの対面開催となったが、中国の習近平・国家主席がビデオ会議での参加を選んだことから、気候変動対策で合意に至るのは容易ではないと、当初から懸念されていた。中国は世界最大のCO2排出国だが、1人当たりの排出量はアメリカの約半分。
気候変動対策の活動家たちはG20の協議内容に、失望をあらわにしていた。活動家ネットワーク「Avaaz」のオスカル・ソリア氏はロイター通信に対し、G20からは「切迫感がほとんど感じられない」とし、「もはや漠然とした、かなえたいものリストをつくっている場合ではない。我々には具体的な取り組みと行動が必要だ」と述べた。
一方で、G20サミットがCOP26への足がかりになるとの見方も出ていた。
米政府関係者は記者団に対し、G20は各国首脳が31日に英グラスゴーに向かう前に「弾みをつけるのを助ける」ものだと述べた。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は仏日曜紙ジュルナル・デュ・ディマンシュに対し、「COPを前にして、(新しい取り組みが)文書化されることなどあり得ない」として、気候変動への国際的な取り組みを決めた「2015年のパリ協定の際、事前に何も決まっていなかったことを忘れてはならない」と同紙に述べた。
(英語記事 G20 pledge climate action but make few commitments / COP26: ‘Window closing’ to meet 1.5C warming target – Alok Sharma)