20カ国・地域(G20)首脳は気候変動問題で合意に達したが、一部の国が推進していた内容には程遠いレベルで妥協した。10月31日に英グラスゴーで開幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で打開を目指すことになる。
G20首脳会議(サミット)の議長国イタリアのドラギ首相は31日の記者会見で、「難しいことを提案するのは容易だ。それを実際に執行するのは極めて困難だ」と語り、「G20各国・地域がきょう成し遂げたことは、長く困難な移行への一歩前進だ。この移行の最終的なゴールポストが何になるのかはまだ分からない」と発言した。
ローマで2日間にわたって開催されたG20サミットの首脳宣言では、国外の新たな石炭発電所への国際的な公的投融資を2021年末までに終了するとしている。国内の石炭については、「削減対策なしの新たな石炭火力発電能力への投資を段階的に縮小すること」に取り組む国々ができるだけ早期にそれを実現できるよう支持すると述べるのにとどめた。
気候変動問題に関する国際的な枠組みとして15年にまとめられたパリ協定の合意を踏襲する文言となり、「地球の平均気温上昇を、産業革命以前の水準からセ氏2度を大きく下回る幅に抑制し、1.5度以内に抑える取り組みを推進する」ことに引き続きコミットすると表明した。
COP26議長国を務める英国は脱石炭を目標に掲げてきたが、多くの国は依然として石炭火力に強く依存としており、気温上昇を抑える上で最大の障害となっている。エネルギー危機で供給確保の重要性は強まり、天然ガスが不足する中で石炭価格が押し上げられている。中国は不足への対応で石炭生産業者に増産を求めている。インドの石炭消費は米欧の生産量より多く、発電の約70%を依存する。
英首相、G20は気候問題への取り組み強化を-手遅れになる前に
ジョンソン英首相は記者団に対し、G20は幾分前進したが、「まだ道のりは非常に長い」と指摘。気温上昇を1.5度以内に抑える目標は「極めて危うい状況だ。このままでは達成しないだろう。正直になる必要がある」と語った。
首脳宣言は温室効果ガスを実質ゼロにする目標について「今世紀の半ばかそのころまで」とするにとどめた。主要7カ国(G7)は6月のサミットで50年を目標とするとしていた。
ロシアのラブロフ外相は記者団に対し、今回のローマでの会議でG7諸国が首脳宣言草案について最初に交渉した後、50年という目標を盛り込んで他の国々にそれを配布することを決めたと指摘。「G7が試みたこのような交渉プロセスは、あまり礼儀正しいやり方ではない」とし、「2050年目標に皆同意しなければならないとは、誰も証明していない」と語った。ロシアは60年の達成を目標としている国の一つ。
ドラギ首相は首脳宣言の文言について「2050年に向けてやや前向き」になったものだと説明。「いずれ2050年のコミットメントに達すると確信している」と述べた。
Coal Consumption
原題:G-20 Climate Agreement Leaves COP26 Talks Needing a Breakthroug(抜粋)