シロナガスクジラなどのヒゲクジラ類が食べる動物プランクトンの量は、年間で従来推定の3倍の可能性が高いと、米スタンフォード大などの国際研究チームが6日までに発表した。2019年まで10年間、太平洋と大西洋、南極海でヒゲクジラ類7種、計約320頭を調査した成果で、論文は英科学誌ネイチャーに掲載された。

 食べる量が多いと、ふんも多くなる。海面近くで光合成する植物プランクトンにとって、ふんに含まれる窒素やリン、鉄は貴重。研究チームは、ふんが多ければ植物プランクトンが増え、クジラの餌となる動物プランクトンも増えると指摘した。

 商業捕鯨でヒゲクジラ類が激減する前の20世紀初めはこの循環が良く成立しており、南極海でシロナガスとナガス、ザトウ、ミンクの4種が小エビに似たオキアミを食べていた量は年間約4億3000万トンと試算。この量は20世紀末時点のオキアミ総量の2倍に上るという。研究チームはクジラの絶滅を防ぐだけでなく、豊かな生態系を取り戻すために、長期的に個体数を回復させるべきだと提言している。

 ヒゲクジラ類は海水を口に含み、ヒゲ板と呼ばれる器官で動物プランクトンをこし取って食べる。研究チームは小型カメラやマイク、加速度計、全地球測位システム(GPS)受信機を組み込んだ装置をクジラに取り付け、海中で餌を食べる行動を把握。さらにドローンで撮影して体長や体重を見積もった。その結果、北太平洋のシロナガスクジラが1日に食べる量は16トン、北大西洋のセミクジラは5トンなどとみられ、ヒゲクジラ類全体では年間に食べる量は従来推定の3倍と分かった。