【モスクワ時事】ロシアがウクライナとの国境地帯や2014年に併合したクリミア半島に軍部隊を集結させているとの情報が出ている。ウクライナ国防省によると、今月初めの時点でその数は約9万人。ロシアは今春にも兵力10万人超とされる軍部隊をウクライナとの国境に集結させた経緯があり、緊張再燃の火種がくすぶっている。
ロシア軍の動きは米メディアが10月末から衛星写真などを基に相次いで報道。ウクライナ国防省は今月2日、「(ロシアは)11月初めの時点で、国境付近とロシアが一時的に占領する地域に総勢9万人を集結させている」と発表した。
発表では、ロシア軍が大規模演習を実施後、ウクライナとの国境から約260キロ離れたロシア西部スモレンスク州に部隊を残しているとも指摘。「ロシアは地域の緊張と周辺国への政治的圧力を維持するため、定期的に軍部隊の移動と集結を行っている」と強調した。ただ、ウクライナ国防省は1日に「ロシア軍部隊の新たな移動は確認されていない」と発表しており、情報は揺れている。
ロシアのペスコフ大統領報道官は2日、米メディアが報じた衛星写真が示す地点はウクライナよりもベラルーシとの国境に近いとして、「質の低い話に時間を浪費すべきではない」と一蹴。一方でロシア国内の軍部隊移動は何ら問題はないとの立場も示した。
ウクライナのゼレンスキー政権が東部の紛争地域で親ロシア派武装勢力への攻撃にドローンを使用するなど対決姿勢を強めていることを受け、ロシアは軍部隊を集結させている可能性がありそうだ。プーチン大統領は4日、クリミアの軍港セバストポリを訪れ、「セバストポリとクリミアは永遠にロシアと共にある」と主張した。
ロシアはさらに、ウクライナを支援する米国をけん制する動きも見せている。ロシア国防省は4日、クリミア沖の黒海に入った米海軍第6艦隊の旗艦「マウント・ホイットニー」の「監視を開始した」と発表した。