• 「教育訓練を受けている間の生活が自助努力だと現実的に難しい」
  • 連合初の女性会長、日本の性別役割意識は依然として根強いと指摘

日本最大の労働組合の全国組織「連合」の芳野友子会長は、岸田政権の経済対策に盛り込まれた成長分野への労働移動の円滑化に向けた支援策は、訓練中の生活保障や就業先の確保という点で「中途半端」だと述べた。24日のインタビューで話した。

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  岸田文雄首相が設置した「新しい資本主義実現会議」にも参加している芳野氏は、多くの人にとって「教育訓練を受けている間の生活が自助努力だと現実的に難しい」と指摘。職業訓練や再就職支援の際には、「最低限の生活保障」や「その後の職業」を確保する必要があると主張した。

  経済対策では「労働移動の円滑化・人材育成の強力な推進」をうたい、「人への投資」として3年間で4000億円の施策パッケージが盛り込まれた。日本の生産年齢人口(15-64歳)が減少する中、労働力を効率的に配置し、生産性を向上させることが求められている。

ガラスの天井

  芳野氏は10月、1989年の連合発足以来、初の女性会長に就任した。ミシンメーカーJUKIの労組出身で、中小メーカーが中心の構成組織からの選出も異例だ。

  「ガラスの天井」を突き破った芳野氏は「日本は性別役割分業意識が根強く残っている」と指摘する。女性は能力があるのに自信がない一方、男性は能力が伴わない人でも自信があるように見えるといった「女性がリーダーになることに男女双方に抵抗がある」という。

  連合の加盟組合員数の約700万人のうち男性組合員は63.8%で、役員レベルでは65.5%を占める。30年までに国際水準と同じ女性役員50%を目標としている。

  芳野氏は「4-5年後には、労働組合の姿は男性中心から少し変わり、女性の役員が増えて、少し女性の顔が見える組織」を目指すと語った。また女性がリーダー的な地位を長く続けることが重要とした上で、自身も長年続けてやっと男性と対等に物事が言えるようになったと振り返った。

「4%程度の目標」維持

  実質賃金の伸びが低迷する中、芳野氏は、2022年春闘の統一要求に向け、企業内最低賃金の目標を現在より50円高い時給1150円以上とし、定期昇給と合わせた賃上げ目標を4%程度に設定すると表明した。4%程度の目標は7年連続となる。

  芳野氏は「まず掲げることに意義がある」と述べ、その背景として宿泊、交通、飲食などコロナ禍で大打撃を受けた業界の組合員から、しっかり目標を設定するべきだという意見が出たことを挙げた。

連合会長の芳野氏(11月24日・都内)Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  連合が支援する立憲民主党は10月の衆院選で議席を減らした。枝野幸男前代表の引責辞任を受け、立民は30日に代表選を行う。連合は衆院選の総括を行った上で対応を決める方針。

  共産党との選挙協力を強く批判していた芳野氏は、「立憲とその先にある共産党との共闘について、あり得ないというスタンスは私としては曲げない」と断言した。