[16日 ロイター] – 英国は16日、主要7カ国(G7)の中でパンデミック(世界的大流行)発生以降で初めて利上げを実施した国となった。米連邦準備理事会(FRB)も前日、2022年の利上げ見通しを示唆。一方、欧州中央銀行(ECB)は刺激策のわずかな縮小にとどまった。

主要中銀が取った異なる道筋は、急速に広がる新型コロナウイルスのオミクロン変異株が世界経済にどのような打撃を与えるかを巡る深い不確実性を浮き彫りにしており、インフレ高進が深刻な米英とそれほどでもない欧州との見解の相違を表している。

物価をコントロールできなくなるリスクはFRBやイングランド銀行(英中央銀行)の方が高いが、ECBのラガルド総裁は記者会見で、パンデミックがユーロ圏の個人消費を抑制し、成長を脅かしていると強調。「現在のパンデミックに対応するため、一部の国ではより厳格な制限措置を導入している。これにより回復が遅れる可能性がある。パンデミックは消費者と企業の信頼感に重くのしかかっている」と語った。

その上で、このような環境下では、刺激策を「段階的に」縮小し、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)からの完全な撤退を確約するのではなく、「柔軟性と選択性を維持する必要がある」とした。

対照的に、FRBは14─15日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ圧力に対応し、2022年中に計3回の0.25%ポイント利上げを行う見通しを示した。利上げを前に量的緩和縮小(テーパリング)を加速することを決め、来年3月に資産購入が終了すると見込んだ。

パウエル議長は会見で「米経済は政策支援の増額をもはや必要としていない」と指摘。物価が違和感を覚えるほどのペースで上昇する一方で、「私の見解では、最大雇用に向け急速に進展している」とし、これらの要因により、全てのFRB当局者が2年前に導入した新型コロナ対応の緊急緩和策から本腰を入れて脱却すべきと考えるに至ったと説明した。

一方、英中銀は16日、政策金利を0.1%から0.25%に引き上げた。さらに、インフレ率が来年4月に目標の3倍の水準となる6%に達する公算が大きいという見通しを示した。

英中銀は「金融政策委員会は中期的インフレ見通しには引き続き両面のリスクがあるが、2%のインフレ目標を持続的に達成するためには予測期間に一定の緩やかな金融政策引き締めが必要になると判断している」との見方を示した。

英国では新型コロナウイルスの新たな感染者数が2日連続で過去最多を記録。この日報告された新規感染は8万8376人で、これまで過去最多だった15日から1万人程度増加した。

また、16日発表されたIHSマークイット/CIPSによる12月の英国の総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は53.2で、11月の57.6から低下し、10カ月ぶりの低水準となった。

一方、英国立統計局(ONS)が15日発表した11月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比5.1%と、10月の4.2%から加速し、2011年9月以降で最高となった。

ECBは16日の理事会で、新型コロナウイルス対応の緊急支援策は終了するが資産買い入れは継続し、来年の景気を支援する方針を表明。声明で「景気回復と中期インフレ目標に向けた進展により、今後数四半期で資産買い入れペースを段階的に縮小することが可能と判断した」とした。

日銀は17日に金融政策決定会合を開催する。

ノルウェー中央銀行は16日、政策金利を予想通り0.25%から0.50%に引き上げた。来年、追加利上げを実施する公算が大きいとの見通しも示したが、新型コロナウイルスの流行とオミクロン株の出現の影響に左右されると指摘した。

スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は16日、政策金利をマイナス0.75%に据え置いた。スイスフラン高を抑制する為替介入を実施する方針も改めて示した。