暴走するトルコ・リラ相場を浮揚させようとトルコ政府が講じた緊急措置は、見えない利上げに相当し、将来に通貨ショックが起きれば財政に打撃が及びかねない。
トルコ・リラ相場は9月からの下げが50%を超えた。エルドアン大統領は投資を呼び込み、低迷する自分の支持率を押し上げようと中央銀行に利下げを求めて圧力をかけ続けた。20日に発表された通貨救済措置は、投資家を乱高下から保護すると約束するもので、リラはこれを受けて急伸。2023年に選挙を控えるエルドアン氏には政治的な時間稼ぎとなった。
外貨に換算したリラの価値が銀行預金の金利を上回る下落率となれば、政府がその損失を穴埋めするというのが救済策の概要だ。政府がこうしてリラの価値に底を設けることは、投資家の利益を損なう利上げを実行しながらそれを公にしていないことになると、専門家は批判する。
「壮大な利上げが沈黙のうちに実施された」と、ビルケント大学のレフェット・グルカナク教授は語る。「為替レートが大きく動けば財政に重い負担がかかる。こうした負担は通常マネタイズされ、つまり為替レートとインフレ率のさらなる上昇を意味する」と解説した。
そもそもは個人投資家のドル需要を押さえ込むのが計画の意図だが、公式な利上げを避けて通ることには代償が伴う。リラの投げ売りが再び起きれば、財務省は新規のリラ預金で発生する損失を補償することになる。
犠牲になった財政
この政策はトルコ経済にわずかに残された明るい材料である財政を圧迫する。誤った政策の代償を公的財政で穴埋めする傾向は、トルコでますます強まっている。
トルコ中銀の元副総裁で現在は野党の政治家であるイブラヒム・ターハン氏は、「財政は最後に残ったよりどころだった。利上げはしていないと主張するがために、この財政が犠牲になった」と話す。「こうしてリラ下落のコストは、社会全体が負担することになった」と述べた。
トルコ・リラ相場、「クレディビリティー」次第か-歴史的反発後
原題:Turkey’s Hidden Rate Hike Buys Erdogan Time But Raises Risks(抜粋)